ここは共用部分?それとも専有部分?

コラム

分譲マンションのエントランスやエレベーター、そして共用廊下や外階段などは、わかりやすい「共用部分」ですよね。そして、自宅の玄関ドアをあけた室内は「専有部分」ということは理解されていると思います。

では、窓ガラス・サッシ、玄関扉、床下の給排水管、バルコニー、玄関ポーチそして、オートロックにつながる住戸内インターホン設備はどうでしょうか?
全てを迷いなく回答できる方は、きっと役員経験豊富な方でしょう。

自分だけが使える「共用部分」とは?

冒頭の例の回答を見てみましょう。

① 窓ガラス・サッシ共用部分(専用使用部分)
② 玄関扉共用部分(専用使用部分)
ただし扉内側の塗装と錠部分は専有部分
③ 床下の給排水管(枝管)専有部分
ただし、竪管とその接手部分は共用部分
④ バルコニー共用部分(専用使用部分)
⑤ 玄関ポーチ共用部分(専用使用部分)
⑥ オートロックにつながる住戸内
  インターホン機器
共用部分(専用使用部分)

このように、上表の③以外は、全て共用部分ですが、共用部分の中で、特定の区分所有者だけが通常使用を認められている部分を「専用使用部分」といいます。

なぜ、専有部分ではなく、共用部分の「専用使用部分」というわかりにくい区分になっているのでしょうか。
それは、建物全体の外観上に影響がある部分や、災害時に非常用通路になる部分などは、共用部分とすることで、個々の住戸で勝手に変更できなかったり、一定の使用制限が設けられているのです。

窓ガラスや玄関扉

ただし、窓ガラスや玄関扉を外観上は大きな変更なく、防音性能や断熱性の高いもの等に自己負担で変更したい場合は、管理組合の許可があれば変更が可能です。

(窓ガラス等の改良)

共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。

2 区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。

3 前項の申請及び承認の手続きについては、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。~以下省略

マンション標準管理規約(単棟型) 第22条

管理規約全体の中では、かなり具体的な内容に踏み込んで書かれている条文ですが、論争となることが多いので、あえて予備的に細かく明記されています。
開口部分の性能向上を計画し修繕するのは管理組合の責任であることは明らかですが、これらの更新工事の計画は、30年以上経過してから予定されるのが普通です。
このことが、すぐにでも防音や断熱等の性能を上げたい区分所有者の妨げになっては理不尽ですから、自己の責任と負担において実施することを認める手続きをあらかじめ用意しているのです。

窓ガラスは共用部分ですから、居住者の過失でなければ割れた場合の修復は管理組合の責任です。
「熱割れ」と呼ばれる現象や、外からの飛来物による破損のケースでは、いつの間にか窓ガラスが割れていることがあるでしょう。
その場合、管理組合(管理会社)に修繕を手配してもらうことができます。

そのことを知らずに、自己負担で修繕してしまった場合でも、「専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りではない。(マンション標準管理規約 第21条第3項)」という規定を適用して、管理組合が負担できる場合がありますので、相談してみてください。

床下の給排水管は専有部分

次に、トラブルが多いのが床下の給排水管です。
ここは、逆に各住戸に管理責任のある専有部分であるという認識が低いところです。高経年のマンションなどでは、漏水の責任をめぐって理事会と漏水を発生させた区分所有者との間でしばしばトラブルになることがあります。

トラブルが深刻化しないように、管理組合が入る火災保険に、個人賠償責任保険が特約で付保されているケースも多いと思います。
ただ、その保険があるが故に、逆にモラルハザードを引き起こし、給排水管の老朽化へ対処する意識が高まらないといった問題もあります。
リフォームをして専有部分の給排水管の更新工事をした住戸からすると、更新工事をしていない住戸の漏水事故で保険請求が増え、管理組合が支払うの保険料が値上がりするならば、不公平感はぬぐえません。

各住戸の自主性にまかせていたら専有部分の配管の更新工事が進みそうにないという管理組合では、共用部分(竪管)の更新工事の際に、全住戸の専有部分の給排水管の更新工事もまとめてやってしまう、という荒業があります。

(敷地及び共用部分等の管理)

敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。

2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。

3 区分所有者は、第1項ただし書きの場合又はあらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない。

~以下省略

マンション標準管理規約 第21条 (敷地及び共用部分等の管理)

この第2項には丁寧にコメントも付されています。

第2項の対象となる設備としては、配管、配線等がある。配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。なお、共用部分の配管の取替と専有部分の配管の取替を同時に行うことにより、専有部分の配管の取替を単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。

マンション標準管理規約コメント(単棟型) 第21条関連

これは、かなり現実的かつ具体的な指針になっています。
専有部分の管理責任は各区分所有者にあることは大前提としつつ、修繕積立金も各区分所有者が積み立てたものであることを勘案すれば、規約を変更すれば、修繕積立金を専有部分の工事費に使うこともできる。ただし、真面目に自己の責任において更新工事をしていた住戸に対しては、別途補償を検討せよ。という指針です。

日常の清掃は専用使用する区分所有者の責任

バルコニーや窓ガラスが共用部分なら、清掃も管理組合でやってくれるのか?という疑問ですが、これも第21条第1項に明記されており、「専用使用権の有する者の責任と負担において行わなければならない。」のです。

玄関ポーチや外廊下に面した窓の格子など、住戸の外から清掃できる部分については、管理会社の日常清掃に入れるかどうか、それぞれの管理組合との取り決めによることになります。

オートロックにつながるインターホン機器

これは、住戸内の火災報知機と一緒で、共用部分にある主要な設備と一体的に作動するものですから、共用部分になります。
故障などあれば、遠慮なく管理組合(管理会社)に連絡して修理してもらいましょう。

これとよく混同されがちなのが、インターネット通信機機器です。
マンションで一括して高速通信を契約するケースが一般的になってきましたが、外からマンション内ONUに回線を引き込み、共用部ルーターを通じて各住戸に通じていますが、共用部分は住戸内まで引き込まれた配線部分までで、住戸内で受け止めて各部屋に分派させる宅内HUBは専有部分です。この宅内HUBは消耗品で10年もしないうちに交換となるケースも多く、各区分所有者の責任と負担で取替えることになります。

いかがでしたでしょうか?
共用部分と専有部分のどちらか迷うケースは、他にもあると思いますが、マンション標準管理規約第8条には、「共用部分の範囲は、別表2に掲げるとおりとする。」と定められておりますので、一度ご自身のマンションの「別表2」をじっくり見ていただき、共用部分と専有部分の違いを認識しておくことは大事だと思います。

<管理組合応援団 団長>

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