2023年3月、マンション長寿命化促進税制が成立しました。
昨年末に与党が税制改正大綱を発表した際にコメントしたとおり、率直な感想としては、だいぶ対象が絞られてしまったなという印象です。
法案が成立し、既に申告対象期間(2023年4月1日~)が始まっていますので、減税を申告できる要件について、もう少し具体的に解説したいと思います。
減税対象となるマンションは、管理計画認定制度により認定を受けたマンションと、各自治体が管理不全を改善・防止するために指導又は助言をして、改善したマンションの2種類がありますが、このサイトをご覧になっている皆様は、前者だと思いますので、管理計画認定マンションの適用要件について書きます。
減税適用の具体的要件
国土交通省から、適用要件についての資料が公表されていますので、そちらによると
一定の要件を満たし、長寿命化工事が完了した翌年の建物部分※の固定資産税が、1/6~1/2(基本は1/3)の範囲で減額される
※区分所有者の専有部分が居住用部分であること、また減額対象は100㎡相当分まで
この一定の要件というのが、
- 築後20年以上が経過している10戸以上のマンション
- 過去に長寿命化工事※を1回以上実施
※外壁塗装等工事、床防水工事及び屋根防水工事の全てを含む工事 - 令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を管理計画の認定基準まで引き上げたこと
この3つの要件を全て満たす必要がありますが、3つ目が重要で、令和3年8月31日以前は修繕積立金が管理計画認定基準未満で、それ以降に認定基準以上に引き上げたことが条件となっています。
つまり、もともと修繕積立金の金額が適正だったので、引き上げる必要なく管理計画の認定を取得したマンションは対象外ということになります。
国土交通省の意図としては、修繕積立金が不足しているため適切な修繕ができないマンションを是正したい、という狙いを明確にするために対象を絞ったということなのでしょう。
そして、工事の期間は、令和5年4月1日から令和7年3月31日の2年間に工事が完了したものだけが対象です。
通常12~15年とされている周期の工事を、この2年間だけに限定されると、対象はかなり絞られてしまうのではないかと思います。制度運営上の都合なのかもしれませんが、もし減税の対象となるために、工事の時期を前倒しにするようなことがあれば、本末転倒でしょう。
また、減税措置の申告期間は、工事完了から3ヵ月ですので、そのスケジュールをしっかり認識して、申告期間内に必要書類を準備しておきましょう。
必要書類の中には、マンション管理士もしくは建築士による証明書も必要なので、管理会社に相談し、依頼先もしっかり押さえておきましょう。
具体的な減税額は?
かなり急ぎのスケジュールで法案が成立したため、肝心の各自治体が条例で定める減税割合については、4月時点で決まっていない自治体がほとんどです。
お住まいの市町村役所の資産税課などの窓口に、条例の審議が予定される議会の日程を問い合わせ、議会の閉会後条例が公布されるのを待ちましょう。
また、申告は、管理組合が一括で行うのではなく、各区分所有者がそれぞれ申告する必要があります。必要書類はコピーでよいので、管理組合が取得した証明書など一式を全戸に「重要書類」として配布し、周知漏れのないようにしましょう。
せっかく理事会が苦労して住民の皆さんが減税を受けられる準備をしたのに、「聞いてない、申告に間に合わなかった」などと区分所有者からクレームを受けたら、これほど残念なことはないですよね。
この減税措置は、管理計画認定制度の申請の後押しになるのでは?と期待をしておりましたが、この条件ですと対象がかなり絞られてしまいますので、減税の対象になればラッキーくらいな気持ちで構えておくのがよさそうですね。
<管理組合応援団 団長>