予算外の支出は、理事会の判断でどこまでできる?

コラム

理事会は、総会で決められた事項(予算)を執行する権限はありますが、何か新しいことをやろうとする場合は、理事会だけで判断して実施することはできません。(参考:「理事長って、そんなに偉いの?」)
しかし、予算策定時には予定していなかった突発的な理由で支出が必要になることもあります。
その際に、いちいち臨時総会を開催しなければ、何もできないのでしょうか?
標準管理規約の条文をもう一度確認して改めて理解をしておきましょう。そして、そうした状況にそなえて、予算計画をたてるコツなどをお伝えします。

予算外の支出は全てNG?

標準管理規約では、予算外の支出は基本的に臨時総会で承認を得る必要があるとしています。

(収支予算の作成及び変更)

理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならない。
2 収支予算を変更しようとするときは、理事長は、その案を臨時総会に提出し、その承諾を得なければならない。
3 理事長は、第56条に定める会計年度の開始後、第1項に定める承認を得るまでの間に、以下の各号に掲げる経費の支出が必要となった場合には、理事会の承諾を得てその支出を行うことができる。
 一 第27条に定める通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむをえないと認められるもの
 二 総会の承認を得て実施している長期の施工期間を要する工事に係る経費であって、第1項の承認を得る前に支出することがやむをえないと認められるもの
4 前項の規定に基づき行った支出は、第1項の規定により収支予算案の承諾を得た時は、当該収支予算案による支出とみなす。

~(以下省略)~

マンション標準管理規約(単棟型)第58条

そして、第3項と第4項で決算期末と総会の開催日にタイムラグがあることによる組合運営上の実務的な対応を示しています。

ただし、緊急時はそうはいってられない。

第58条の第5項、第6項は緊急時の対応を規定しています。

~(前省略)~

5 理事会が第54条第1項第十号(※)の決議をした場合には、理事長は、同条第2項(※)の決議に基づき、その支出を行うことができる。

6 理事長は、第21条第6項(※)の規定に基づき、敷地及び共用部分等の保存行為を行う場合には、そのために必要な支出を行うことができる。

※第54条第1項第十号:災害等により総会の開催が困難である場合における応急的な修繕工事の実施等

※第54条第2項:第48条の規定にかかわらず、理事会は、前項第十号の決議をした場合においては、当該決議に係る応急的な修繕工事の実施に充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取り崩しについて決議することができる。

※第21条第6項:理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらずに、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。

マンション管理規約(単棟型)第58条

つまり緊急時には、予算がなくても臨時総会の開催が困難なら、理事会の決議によって修繕工事を実施できるし、理事会さえ開催が難しい場合は、理事長の判断だけで必要な支出ができることが規定されています。

災害等の緊急時でなければ、予算外支出は臨時総会が必要?

保守的に運営するなら、総会で承認されるまで実施は待つということになりますが、実際には、理事会判断で実施してしまって、通常総会で事後承認を受けるという手続きもケースとしてはあります。

例えば、電気料金などは、前年までの電気代を参考に予算設定しますが、期中に電気料金が値上がりして、予算を上回ってしまいそうになった時、いちいちそのために臨時総会を開催すべきでしょうか?
期中に予算オーバーが予測ができたなら、理事会でその状況を共有し、議論した議事録を残しておき、通常総会で電気料金の値上がりによって実際の支払額が予算を上回ってしまったことを説明すれば、それについて文句を言う組合員はいないでしょう。

だからといって、なんでも予算を無視していいわけがありません。組合員の賛否が分かれるような判断を理事会が決議して実施してしまった場合は、実施した行為そのものではなく、手続き上の問題について厳しく指摘する人もいますので、後味が悪い結果になることもあるのだと覚悟しなければなりません。

予備費を設定しよう

そのように手続き上の問題を指摘されないようにするには、事前に一定額を予備費として予算枠を確保しておくことです。当初予定はしていなかった事案だけど臨時総会を開くまでもないような案件を、理事会が判断して迅速に実施できるようにしておくのがベストです。
ただし、予備費の支出があったときには、次の総会で詳細にその内容を報告するというルールにしておきましょう。

例えば何らかのトラブルが発生して弁護士やマンション管理士などの専門家に相談をする必要が生じたときなども、予備費の設定があると個別案件の相談料なら、支払うことができるでしょう。

ただし、予備費が過分に大きいと、不正の温床になりかねません。全体の費用予算の1~5%程度が適切ではないでしょうか。

予算や会計については区分所有法には規定はないので、規約で自由に規定できますが、お金がからむ話はトラブルになりやすいので、あらぬ疑いを生じさせないためにも、できるだけ透明・公正なルール・運営となるように、標準管理規約に準じたルールを設定すべきでしょう。

<管理組合応援団 団長>

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