分譲マンションの区分所有者になった方は、一回だけでもいいので、こちらの記事をを読み流してみてください。
区分所有法は法律で、順守しなければ法律違反になり罰則もある。一方で管理規約は個々のマンションが独自に定めるルールで、分譲マンションという共同体を運営していくために各区分所有者(と占有者)が守るべきもの。
また、標準管理規約は、個々のマンションで独自に定めることができる管理規約のお手本となるもので、国土交通省が公表し、時代に合わせて適宜改訂されている。
標準管理規約が初めて公表された昭和57年以降、ほとんどの新築マンションの原始規約は、この標準管理規約をお手本にしている。
このような話は、新築マンションであれば、購入者に配布されるハンドブックなどに書いてあると思いますが、初めての持ち家で中古でマンションを買う場合では、自分から仲介業者などに質問しない限り、この基本的な関係性を知らないまま区分所有者になる人も多いでしょう。しっかり記憶しておく必要はありませんが、知っておいて損はないと思います。
管理規約の強行規定と任意規定
管理規約は、個々のマンションで独自に定めることができると説明しましたが、区分所有法に規定があるものは、当然法律が優先します(強行規定)。ただし、区分所有法に規定はあっても、法律の条文に「規約で別段の定めをすることができる」などの文言があるものは、許された範囲で規約で管理組合が独自に設定することができます。
関係性を整理するとこんな感じです。
①区分所有法に規定がある場合
(強行規定)→ 区分所有法 > 管理規約
②区分所有法に規定があるが、規約で別段の定めができる条文がある場合
(任意規定)→ 区分所有法 < 管理規約
③区分所有法に規定がない場合
(任意規定)→ 区分所有法 < 管理規約
以下は、よく話題となることのある標準管理規約の項目です。
●管理規約の設定・変更・廃止は特別決議(4分の3以上の賛成) ① →区分所有法に規定のある強行規定 |
●共用部分の(大きな※)変更は特別決議(4分の3以上の賛成) ② →区分所有法に規定があるが、規約で区分所有者の定数を過半数まで減じることができる任意規定(ただし① →議決権の定数は強行規定) |
●普通決議(総会の出席者の過半数の賛成) ② →区分所有法では、区分所有者及び議決権の各過半数だが、規約で別段の定めができる任意規定 |
●理事長は、年1回以上総会を開催する義務 ① →区分所有法に規定のある強行規定(管理者をおいている場合の規定) |
●総会の招集通知は開催日の2週間前までに発信 ② →区分所有法では1週間前の規定だが、規約で伸縮することができる任意規定 |
●規約の保管、保管場所の掲示、閲覧させる義務 ① →区分所有法に規定のある強行規定 |
●総会の議事録の作成と保管、保管場所の掲示、閲覧させる義務 ① →区分所有法に規定のある強行規定 |
●理事会の議事録の作成と保管、閲覧させる義務 ③ →区分所有法には規定のない任意規定 |
理事会の議事録の署名・保管・閲覧は、任意規定であることは意外に思う方もいらっしゃると思いますが、実は区分所有法には、そもそも理事会に関する規定がないのです。
区分所有法に規定のない事項
区分所有法には、理事会に関する規定がありません。規約にある理事会の運用、理事や監事の役割、選任の方法や任期、役員資格などの規定に、法律の裏付けはありません。
また、昨今問題となっている、高経年マンションにおける修繕積立金不足に関して、国や自治体はかなり踏み込んで是正を図ろうとしていますが、区分所有法には会計に関する規定もないので、管理計画認定制度は区分所有法に根拠を求めることはできず、かなり遠回りなアプローチになっています。
一見、不十分な法律に見えますが、区分所有法は、そもそも民法を補完する特別法であって、民法の共有に関する条文を分譲マンションに当てはめると明らかに不都合な部分について制定されたという歴史があります。
そして、民法が定める私的所有の尊重や私的自治の原則がベースになっていることから、マンションの中の運用は、管理規約という私的自治によって定められたルールで運営されるべきという考え方になります。
ただし、マンション管理の専門家ではない団体が、ゼロからルールを策定すると、非常識なものや、矛盾するもの、マンション管理とは関係のないものまで定められてしまうなど、かなり混乱があったことを受けて、国がお手本となる標準管理規約を公表して、「一般的なマンションならこのような規約になるけど、これをベースにして各管理組合で独自に定めてね」という現在のスタイルが定着しました。
どんな規約でも有効か
区分所有法第30条で、「規約で定められること」が規定されています。
建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
区分所有法第30条1項
つまりマンション管理や使用に関するもので、区分所有者相互間のルールであれば、どんな内容でも可能ですが、区分所有法ではなく民法90条によって「公序良俗に反する契約は無効」とされますので、何でもありではありません。
また、同じく区分所有法第30条の3項で、「~総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。」とありますので、一部の区分所有者だけが得をするような規約は定められません。
更には、同法31条に、規約を設定、変更、廃止する場合は、「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」とあり、これは強行規定で、標準管理規約では第47条7項に規定されています。
ご自身のマンションの規約が一部の区分所有者に極端に有利な規定になっていれば、区分所有法第30条3項により、無効を訴えることができます。
また、不公平な規約の設定や変更がなされようとしていたら、同法第31条及び管理規約により、自己に特別の影響を及ぼすので承諾しないと主張することができる、ということを知っておきましょう。
<管理組合応援団 団長>