管理規約を適切に保管できてますか?

新任理事の心得

管理組合にとって、「管理規約」は、一番大切な書類のひとつだということは、理事の皆さんはよく認識していらっしゃると思います。

では、お手元にある「管理規約」は、最新版でしょうか?もし、分譲時に配布された原資規約だとしたら、その後どの条項にどんな変更がなされたか、把握していらっしゃいますか?

「Yes」と回答できた理事の皆さんは、とても希少な区分所有者だと思います。「自分の手元のものは古いけど、管理室とかにきっと最新の管理規約が保管されているはず」と考えている方がほとんどではないでしょうか。

Stack of business papers isolated on white background

そして、あるはずと思っていた最新の管理規約が整備されていない管理組合は、実はかなり多いのです。

「規約原本」と「現に有効な規約」

皆さんのマンションでは、最新の管理規約の閲覧請求があったら、何を閲覧させますか?規約原本だけを見せているところはないと思いますが、、、

規約の管理について規定している標準管理規約第72条も、規約変更時の保管の方法について規定が加えられたのは、2004年の改訂版からです。規約変更時の保管の大切さが認識され始めたのはかなり最近のことなのです。

規約原本は大切に保管されてるところがほとんどだと思いますが、変更の履歴が整理されていて、最新の規約(現に有効な規約)が組合員や住人に周知されているところは、まだまだ少ないのが現実です。

規約変更時の保管方法を定めた標準管理規約第72条の条文も、以下のように少し曖昧な表現になっているため、管理会社によって保管方法は違いがあるようです。

(規約原本等)
第72条
~(前省略)~
3 規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載し、署名した上で、この書面を保管する。
4 区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、理事長は、規約原本、規約変更を決議した総会の議事録及び現に有効な規約の内容を記載した書面(以下「規約原本等」という。)並びに現に有効な~(中略)~細則の内容を記載した書面(以下「使用細則等」という。)の閲覧をさせなければならない。
~(後省略)~

マンション標準管理規約(単棟型)

この条文の「1通の書面」は、どんなものをイメージされますか?

  1. 直近の変更箇所の新旧対照表が記載された書面に、「総会で変更を決議された内容と相違ない」旨の一文と理事長の署名があるもの。
  2. 直近の変更を反映した最新の規約全文の最終頁に過去全ての変更履歴(日付と変更箇所)と「総会で変更を決議された内容と相違ない」旨の一文と理事長の署名があるもの。

どちらでしょうか?1.と認識して規約変更毎に総会議案をもとに書面を作成して保管している管理組合もあります。しかし、使う側からすると、圧倒的に2.の方がいいですよね。

管理組合で組合運営に専用のWebサービスを利用している場合は、そこにアップロードする「管理規約」は、当然規約原本ではなく、現に有効な規約の全文でしょう。
規約を変更する毎に最新版を「印刷して配布」するのは、お金も手間もかかりますが、専用のWebサービスにアップロードするだけでしたら、周知のハードルはぐっと下がりますね。

さて、管理規約の望ましい保管方法について書きましたが、そもそも、規約原本が紛失しているという話も実は珍しくありません。

規約原本を紛失している場合

規約原本が紛失していることが判明した時、管理会社の責任を追及して管理委託料の減額などを要求しようとする管理組合もありますが、気持ちは理解できますが、それは過剰な要求だと思います。

少なくとも管理規約(規約原本)は、区分所有法でも標準管理規約でも保管の責任は管理者(理事長)にあると明記されています。
理事長はキャビネットの合鍵を渡されているだけで、資料の更新や整理、閲覧請求への対応などの実務は管理会社が担当しているとしても、その業務を委託しているのは理事長であり、例えば理事長が交替するときには、しっかり現物を確認して引継ぎをすべきでしょう。

このように、大抵の場合管理組合側にも落ち度があるので、管理会社に対して責任追及をし続けるのは建設的ではないので、これからどうしたらよいかに集中すべきでしょう。

原本のコピーは存在していて、組合員の複数人が同じコピーを保管していれば、それを新たに製本し、総会の特別決議で承認を受け、その規約に理事長が署名すれば、規約原本を「再生」することができます。

しかし、原本のコピーを誰も持っておらず、規約の変更記録も完全とはいえない場合で、どこかのタイミングでその時の最新版と思われる規約が保管されていた場合は、その規約を新規に規約原本に設定することになります。

分譲時の規約原本は、区分所有者全員が押印(署名)したものが原則ですが、標準管理規約のコメントに、「全員が押印(署名)した規約が無い場合は、~(中略)~初めて規約を設定した際の総会の総会議事録が規約原本の機能を果たすことになる」とあります。
ある程度経年したマンションで、全員から押印(署名)を集めるのは、かなりハードルが高いので、4分の3の特別多数決議で規約を新規設定するのが現実的でしょう。

数10年も経年していれば、管理組合は様々な問題に直面します。問題がわかったときが始めの一歩です。問題の発生原因を追究しすぎるのは生産的ではありません。是非、未来志向で「これからの適切な管理」に、目を向けていただきたいと思います。

<管理組合応援団 団長>

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