総会や理事会をWEB会議で実施できる?

コラム

ここ数年のコロナ禍において、理事会、総会のWEB(ウェブ)会議を多くの管理組合で検討されたことと思います。
管理規約や区分所有法の壁があって導入が難しい、という話を聞くこともありますが、どんなことに留意すべきなのでしょうか。

理事会のWEB会議の導入方法

まずは理事会のWEB会議の導入について考えてみます。
管理規約の「理事会の会議及び議事」の条項をご確認ください

(理事会の会議及び議事)
第53条 理事会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する。
(以下省略)

マンション標準管理規約(単棟型)

2021年6月の改正で標準管理規約の同条項に、会議の方式にWEB会議を含むことが明記されました。ごく最近の改正ですから、ほとんどの管理組合の規約には、「WEB会議~含む」の文言は入っていないと思います。
しかし、国土交通省は、この改正にあたって「ITを活用した総会・理事会が可能であることを明確化したので、各管理組合の管理規約の変更をしなくても、ITを活用した総会・理事会の開催は可能」と説明していますので、規約に明記されていなくてもWEB会議は可能と考えて良いでしょう。

ただし、理事の中で、WEB会議可能なデバイスを所持していない、操作の不慣れ、通信料が従量制などの理由で、WEB会議に参加できないという方がいらっしゃる場合には、その方が納得する形で実施する必要があります。
たとえば、WEB理事会の前に、各議案について、個別に時間を設けて十分にその方の意見を聞き、WEB会議で共有してから採決をする、あるいはリアル会議室を設けて、リアル会議とのハイブリッドで開催するなどの配慮をお勧めします。

WEB会議に理解を示さない理事がいる中でWEB会議を実施して、参加しなかった理事から決議の無効を主張されたとしても、後日改めてリアル理事会で追認する決議をすれば、その有効性を問われることはありませんが、余計な揉め事をつくらないよう、事前に理事全員の理解を得ておくべきでしょう。

理事会の決議にメールや書面での議決権行使は有効?

この点が、総会と理事会で大きく違うところです。
理事会は、しっかり議論してから決議することが求められていますので、総会のような事前の議決権行使や委任状は基本的に認められていません。
例外として、窓ガラス等の改良・修繕や、専有部分のリフォーム等の承認/不承認だけは、理事の過半数の同意があれば、メールや書面で決議が可能であるとされています。

しかし、SNSやビジネスチャットなどで日ごろから理事会メンバーで活発に議論ができているようなら、決議についても柔軟に対応できるように、規約を変更することも検討されるとよいでしょう。

オンライン理事会の始め方についても記事をアップしましたので、そちらもご覧ください。

総会をWEB会議で実施するには?

理事全員の同意をとることも現実的に可能で、やり直しも難しくない理事会とは違い、総会は通常年に1回の開催で、厳格な運営が求められるため、より条件が厳しくなります。2020年12月に、マンション管理業協会が総会をWEB会議で実施するためのガイドラインを公表していますので、参考にしてみましょう。

そのガイドラインには、総会でのWEB会議システムの利用方法を3つのパターンで解説しています。

  1. リアル開催+オンライン視聴(発言、議決権行使なし)
  2. リアル開催+オンライン参加(発言、議決権行使あり)
  3. オンラインのみの開催

このうち、最も導入が容易なものは、1.のリアル開催にオンライン視聴もできるようにすることです。これは、コロナ禍でなくても今後普及する可能性があると思います。オンライン視聴の位置づけを、後日配布される総会議事録の代わりと考えると、実際の発言や会場でのやり取りを要約なしで視聴できるので、非常に大きな進歩と言えます。万一通信トラブルなどでオンライン視聴ができなかったとしても、総会の有効性が問われることはありません。
段階的に導入を進めるなら、まずここから始めるとよいでしょう。

2.のリアル開催に加え、オンラインで「出席」し、発言や議決権行使もするパターンは、1.と準備する機器やソフトウェアはあまり変わらないイメージかもしれません。最近のWEB会議システムは、視聴だけではなく挙手して発言する機能も装備されていますので、オンラインでも総会に「出席」できる条件はそろっています。
問題は、リアル総会にはないトラブルにどう備えるか、ということです。
マンション管理業協会のガイドラインでは、トラブルが起きたときの対応例はざっくり示されていますが、強調されているのは「トラブルが起きた時の対応方法を事前に管理組合でよく話し合い、周知しておくべき」という点です。

現状想定されるトラブルは、主に通信・ソフトウェアのトラブル、なりすまし、意図的な妨害行為などが考えられます。
通信・ソフトウェアのトラブルによって参加不能になった場合は、その規模によっては「総会のやり直し」を検討しなければなりません。
また、パスワードの流出や解読によって、なりすましや妨害行為があるかもしれません。
これらのリスクを極力低減するには、企業が重要なオンラインイベントを実施する時のようなバックアップシステムや厳格なセキュリティ環境を用意することになり、大きな手間と費用が発生します。
現状では、そのような備えは費用対効果に見合わないでしょう。

リアル開催でも「本人確認」は、万全ではありませんし、妨害行為の防止にも限界があるとすれば、オンライン特有のトラブルについても、ある程度のリスクは受容した上で進めていくのが現実的なのではないでしょうか。

オンラインのみで総会を開催するには?

最後に、3.オンラインのみの開催ですが、2.と準備と覚悟はそれほど変わらないものの、先のガイドラインでは、リアルを希望する参加者が一人でもいたら、オンラインのみの開催は実施すべきでないとしています。

主催者側から見ても、理事メンバーと管理会社の担当者、その他専門家のアドバイザーなどと総会進行中に目配せできたりメモを渡したりできることは、スムーズな進行には意外に大事ですので、少なくとも総会主催者側が集まる場所はリアルで確保しておくことをお勧めします。

めったにないことですが、総会中に参加者から議案の修正動議が出されたときに、その動議の扱いをどうするか、その場で臨時理事会を開くということもありえます。

将来的には、機能的にも参加者のITリテラシーの観点でも、すべてオンラインで可能になるかもしれませんが、現段階では3.を実施できる管理組合はほとんどないのではないかと考えています。

<管理組合応援団 団長>

タイトルとURLをコピーしました