上の階がうるさい?

トラブル対処法

マンションの3大トラブルのひとつでもある騒音問題。特に上下階の音問題は、ほとんどのマンションで少なからず起きるものではないでしょうか。

マンションによって、音の響きやすさは違うのか?という話で言えば、高経年のマンションが建設された時代から比べれば、最近のマンションは、全体的に遮音性能が上がっていると言えます。また、分譲マンションの方が、賃貸マンションよりも一般的には遮音性能が高い仕様になっています。

遮音性能を左右するのは、スラブ厚はもちろんですが、2重床か直貼りか、カーペットかフローリングか、フローリングの中でも製品によって遮音性能に差はあります。
いずれにしても、集合住宅は壁や床を隔てて住戸が接していますので、お互いの生活音を完全になくすことは期待できません。このサイトは管理組合向けですので、今回は、生活音のトラブルが起きたときに管理組合としてどう対応したらよいか、について考えたいと思います。

上階がうるさいのでなんとかしてほしい、と管理員に相談があったら?

区分所有者は管理規約を守らなければなりません。もしある住戸が騒音を出していたとすると、管理規約では、どのような項目に違反することになるのでしょうか。

標準管理規約の第67条に、「物件内における共同生活の秩序を乱す行為を行ったとき」に管理組合(理事長)は必要な措置がとれるようになっています。

しかし、特に上下階の生活音については、客観的に「共同生活の秩序を乱す行為」として特定するのは簡単ではありません。例えば「昨日はうるさかったんです」とか「さっき大きな音がしました」という通報では、客観性があるとはいえず、管理組合や管理員は直接的なアクションはとれません。

一般的には騒音による被害の相談があった際には、注意喚起のビラを全戸に配布したり、掲示したりすることになります。その際に、音の特徴、音が発生する時間帯などより具体性をもたせるとよいのですが、フロアの特定やエリアの特定は避けるべきでしょう。
なぜなら、厄介なことに、音源が真上の部屋とは限らないからです。斜め上の部屋だったり、二つ上の階の部屋の音が伝わってくることもあるのです。

注意喚起のビラの配布や掲示以外にできることはある?

多くの関係者が口をそろえるのが、普段のコミュニケーションが良好なマンションはトラブルが相対的に少ないということです。特に生活騒音については、感覚的な要素で感じ方が変わりますので、相手の顔を想像できるかどうかは重要なポイントになります。
例えば、上階に住む小さい子供のいる家族とは、普段から会えば挨拶をする関係であれば、その子供が部屋で大きな音を出したとしても、「あの子もだんだん大きくなって動きも活発になったのだろうなぁ」と天井を見上げながら想像すると、その音は騒音ではなくなります。それが、まったく面識のない家族だった場合、「子供がこんな音を出すまでほっとくとは、無神経すぎる!」とクレームにつながるのです。

普段から、住人同士の挨拶が自然になされるようなマンションであれば、騒音トラブルは起きにくいと言えると思います。

また、提訴して騒音を出す行為をやめさせることはできないか?という質問もよく受けることがありますが、区分所有法第57条では、共同の利益に反する行為に対して集会(総会)の決議をもって提訴により停止等の請求をすることができることになっています。しかし、騒音のトラブルで、この条項にあてはめるには、階下の住戸の主張だけでは「共同の利益に反する」とはいえず、音源となる部屋周辺の複数の住戸からクレームが出るほどの大きな騒音でなければ、なかなか認められません。そして提訴には総会の決議が必要ですから、マンションの住民全体で騒音の行為を停止させたいという意思決定が必要になりますので、分譲住宅では、そうそう見られないような酷い騒音被害でなければ、提訴という手段は難しいと考えておいた方がよいでしょう。

住人同士が直接対峙している場合、管理組合はどうすればいい?

上下階の騒音トラブルでは、複数住民の迷惑にならないと行動が起こせない管理組合よりも、相手が特定できてご自身の被害を明確にできるなら、自分で提訴した方が早いとも言えます。

提訴までいかなくても、警察に相談することでも解決につながることもあります。管理員や理事の人が仲裁しても効果がない場合でも、警察官が仲裁すると効果が得られる場合があります。「警察に通報する」ことに強い抵抗を感じる方もいますので、すべてのケースでお勧めするものではありませんが、一つの選択肢として知っておいて損はないと思います。

しかし、一度騒音問題でこじれてしまった住民同士の関係は、なかなか修復は難しく、最終的にはどちらかがマンションを出ていく結果となることも珍しくありません。
こればかりは、残念ながらマンション購入のリスクのひとつとして受け入れるしかないのではないでしょうか。中規模以上の戸数のマンションであれば、一件や二件はそうしたトラブルはあるものなので、どうしてもマンション特有のトラブルとして認識されがちですが、戸建てでも、ご近所さんとのトラブルはあるでしょうし、トラブルがもとで予定外に売却しなければならなくなった時の流動性リスクや損失リスクは戸建ての方が大きいという考え方もあるでしょう。

いずれにしても、マンション全体が良いコミュニティとなっていることが、一番のトラブル防止策だと思いますので、このサイトでも、よりよいコミュニティの形成に役立つ情報も発信していきたいと思います。

<管理組合応援団 団長>

タイトルとURLをコピーしました