理事(役員)の成り手不足は、特に高経年のマンションではかなり深刻な問題になってきました。
高経年による修繕カ所の増加で理事会の負担増、区分所有者の高齢化、賃貸率の増加で理事に就任できる居住する区分所有者の減少といった理由で成り手不足は深刻化していきます。
そうなってしまう前に、早い段階から対策を考えておきたいものですね。
しかし、既にその問題に直面していたら、管理組合の財政状態を踏まえて手段を考えていきましょう。
役員の成り手不足になる前にすべきことは?
短期的、中期的、長期的な対策があると思います。
① | 短期的対策 | 役員報酬の設定と役員辞退金(組合活動協力金)の設定 |
② | 中期的対策 | 管理組合活動の積極的な広報 |
③ | 中期的対策 | コミュニティ活動の奨励 |
④ | 長期的対策 | 若い世代の家族に魅力的な住環境の整備 |
①統計によると役員報酬を設定しているマンションは、月額数千円~数万円を役員報酬として支払っているようです。それでも役員の皆さまのご自身のお仕事での「時給」に比較すると、ボランティアの感覚に近いでしょう。
また、役員辞退金(組合活動協力金)の設定は、それほど一般的ではありませんが、設定する場合は、役員報酬の金額と整合させているところが多いようです。
これらの設定は、多少迷っている人の背中を押すくらいの効果はありますが、辞退することを決めている人にはあまり効果は期待できません。
団長としては、中期的対策が一番現実的で効果が高いと感じています。
②まず、広報活動です。毎月の理事会で、どんなことが議題になっているのか、マンションの中期的な課題は何か、それらをできるだけ詳しくお知らせすることで、組合員一人ひとりにマンション管理について関心を高めてもらいます。
③そして、コミュニティ活動も結果的に組合活動への協力を促してくれることになります。自治会(町内会)とも連携するなどして住民参加型のイベントを実施することでマンション住民同士の一体感が強くなりますし、「マンション管理」については住民共通の話題ですので、自然にそうした会話も多くなるでしょう。
「マンション管理に対する関心の高さ」は、組合活動への参加姿勢に正比例すると思います。
④最後に長期的対策ですが、いくら関心が高くても、老いには勝てません。役員の辞退理由のトップは「高齢のため」です。高経年のマンションでも、途中で若い世代が入ってきて新陳代謝があるマンションは、管理組合の活動も活発に続けられているところが多いと思います。
そのためには、子育て世代や若い世代が住みやすさを感じる住環境を意識してつくっていくことが大切です。
キッズルームや敷地内の遊具など、施設を整備するのには限界がありますが、「子供が騒いでうるさい」などのクレームが多かったり、禁止行為の貼り紙が多いマンションは、子育て世代が住みやすいとは感じないでしょう。
また、エントランスや外壁のデザイン、玄関ドアなどは、どうしても時代を感じさせてしまうので、大規模修繕などでリフォームを検討する際に、若い世代にとって魅力あるかどうか、という視点があるとよいですね。
既に成り手がいなくて困っている場合は?
輪番で役員が回ってきたけど、仕事が忙しいので配偶者が理事会に出ているとか、高齢の区分所有者の代わりに息子が出席をしている、など実際にはよく聞く話です。
しかし、理事は総会で選任され、組合員全員のために業務をする、つまり理事会には本人が出席して議論に参加し、議決権を行使することが求められていますので、原則として理事の代理は適当でないとされています。
判例で、一定の範囲で理事会への代理出席を認める規約の有効性が認められた例もありますが、あくまでやむを得ない場合の例外と解釈すべきでしょう。
やはり、既に役員の成り手が不足している場合は、外部専門家にアウトソースすることをお勧めします。
近年役員の成り手不足問題が顕在化してきたことから、2011年のマンション標準管理規約の改正で、それまで役員の資格要件にあった居住要件が削除され、更に2016年の改正で外部専門家を役員として選任できることとする条文も選択肢として提示されました。
もちろん費用負担はありますが、費用負担以上の効果が期待できると思います。外部専門家を管理者や役員に受け入れる方法については、「専門家の活用方法」「第三者管理者方式ってなに?」で詳しく解説していますので、ご参考にしてください。
成り手不足が慢性化している場合、普段の日常管理業務を回すのがやっとで多面的な議論をする時間も人もいない、ということもあるでしょう。将来の問題となりそうなことも先送りされているかもしれません。
マンション管理士などの専門家は、管理組合の立場に立って、無駄な費用の削減や、将来の問題に対する対策の建設的な立案など、単に管理の業務をこなすだけでない様々な発見や助言をしてくれると思います。
その利点から、人手不足になっていない管理組合でも専門家と顧問契約するマンションも増えていますので、是非一度検討されることをお勧めします。
<管理組合応援団 団長>