専門家の活用方法

マンションの専門家

理事になってみて、マンション管理は、あまりに範囲が広くて専門的なので、各分野のプロに助言を聞きたいと思うことはないでしょうか。

弁護士、建築設備士、建築士、税理士など、それぞれの専門分野にそれぞれのプロがいますが、プロを探すのも簡単ではありませんし、専門分野のプロでも、「マンションで起きること」に限定すると、あまり経験がない専門家も少なくありません。

その点、マンション管理のオールラウンダーの専門家が、マンション管理士管理業務主任者です。彼らに相談すると、もちろん経験や技量にもよりますが、どんな問題に対しても8割は満足できる助言がすぐに得られると思います。
マンション管理に係わる法律や設備、建築などに関しては、その分野の専門家並みの知見を備えていて、理事会や総会の運営や規約、住民間のトラブルなどに関してはどの専門家よりも適切な助言ができるでしょう。

管理業務主任者といえば、管理会社のフロントマンが持っている資格ですので、やはり管理会社になんでも聞いたらいいのか?というと、そうでもありません。
詳しくは、「マンション管理士って必要?」で解説している通り、管理会社のフロントマンはオールラウンダーですが、利益相反となるケースが非常に多いのです。

平成30年度マンション総合調査によれば、マンション管理士を活用しているマンションは13%となっていますが、残念ながら10年前の調査からこの比率は変わっていません。国土交通省はマンション管理士の活用促進を後押ししていますが、マンション管理士自身の努力ももっと必要なのだと感じています。

外部専門家が役員になる場合もあるの?

単発のコンサルティングや顧問という活用の仕方は、よく聞くようになりましたが、もう一歩踏み込んだケースが理事や監事などへの外部役員の登用です。その必要性が高くなったことを受けて、国土交通省がガイドラインを出しています。

国土交通省が紹介している外部専門家の活用パターンは以下の3つですが、【】内の名称や解説は団長による見解です。

1.理事・監事外部専門家型
 【外部役員受け入れ型】
従来の体制のまま、理事会役員に外部専門家を
入れる。
2.外部管理者理事会監督型
 【外部CEO受け入れ型】
業務執行の責任者である管理者(通常は理事長が
兼務)に外部専門家が就任し、理事会が管理者を
監視する。(大企業のCEOと取締役会の関係)
3.外部管理者総会監督型
 【ALLアウトソース型】
2.と同様に管理者に外部専門家が就任し、監事
を残して理事会を廃止
ただし、監査法人等の外部監査を義務付ける。

管理者に外部の第三者が就任する2と3を「第三者管理者方式」といいます。
それぞれのメリットは、

1.外部役員受け入れ型従来の体制が強化され、適切な判断と検討時間の短縮
期待できる。
外部役員を管理組合の意思で変更することが容易。
2.外部CEO受け入れ型1.のメリットに加え、もっとも重責で業務量も多い
理事長の役割の多くをアウトソースできる
3.ALLアウトソース型1.と2.のメリットに加え、理事も必要なくなる
組合員が行う業務は、監事の仕事だけ。

一方でデメリットや留意点については、

1.外部役員受け入れ型外部役員の効果が理事会メンバー以外の組合員にはわか
りずらいので、導入の際は総会で丁寧な説明が必要
2.外部CEO受け入れ型管理者という管理組合の最も重要なポストを第三者に
委託するので、監視する理事会の役割は重要
3.ALLアウトソース型理事会を廃止するので管理者を変更するのは大変。
実質的に管理者を評価できる組合員は監事だけになる
組合員の管理に対する関心が低くなる。

外部役員や外部管理者の費用は、2が最も高くなるケースが多いと思います。2よりも3の方が、理事会への出席や理事会メンバーへの説明をなくすことができるので、外部管理者の業務負荷は3の方が軽くなるためです。
ただし、3は外部監査のための費用が発生しますので、その費用も計算に入れて比較すべきでしょう。

1より2、2よりも3の方が組合員の負担は軽くなるのでより魅力的に見えるかもしれませんが、団長としては3については、特にデメリットについて慎重に検討すべきだと考えています。
理事会を廃止してしまうと、組合員の管理に対する関心が低くなるのは目に見えています。外部管理者の働きに大きな問題であれば外部監査による指摘があると思いますが、「あまりいい仕事をしていない」程度だと、変更を検討するのも大変です。まず5分の1の組合員の有志を集めなければ臨時総会を開くこともできませんし、関心の低くなった組合員から賛同を得られるかどうかも微妙でしょう。

管理会社が管理者になるケースはあるの?

ケースとしては昔から存在しています。

図の通り、【ALLアウトソース型】の管理者を管理会社が担うケースが右の方です。

この図を見れば、管理会社にとっては、外部管理者の手数料をタダにしても引き受けたい方式だということがわかると思います。
この方式は、居住しない区分所有者が多数を占める投資用マンションやリゾートマンションなどでは昔から見られる方式ですが、近年普通の分譲マンションでも役員の成り手不足問題を抱える管理組合に積極的に提案する管理会社があるようです。

管理会社の社員が自分の会社に仕事を発注する方式ですから、問題の起きやすい構造だと思いますので、団長としてはお勧めいたしません。

<管理組合応援団 団長>

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