マンション管理士は100%管理組合の立場で助言ができるマンション管理の専門家です。
管理組合が対応しなければならない課題は、とても広範囲で専門的です。管理組合の理事になる方は、豊富な社会人キャリアを持ち、物事を多面的に検討して常識的な判断ができる方はたくさんいらっしゃると思いますが、法律にかかわる問題や、住宅設備の技術的な話、大きな金額の取引を決定するときなど、専門的な助言が必要だと感じる場面は多いと思います。
そうした時に、まず一番先に頼りになるのは管理会社のフロントマンです。いつもそばにいて自分たちのマンション固有の事情もよく理解していますし、何より「総会や理事会の議事に対して助言をする」ことは、管理委託契約に含まれているはずですので、相談しない手はありません。
多くのフロントマンが取得している「管理業務主任者」と「マンション管理士」は、どちらも国家資格で資格試験の出題範囲もかなりの部分が重複しています。専門家として備えている知見がほぼ同じならば、専門家はフロントマンで十分と考える理事の方も多いと思います。
マンション管理士は管理業務主任者よりも専門知識があるの?
マンション管理士試験の合格率は8%と難易度の高い試験といわれています。そして管理業務主任者試験の合格率は20%程度ですので、資格取得にはマンション管理士の方がたくさん勉強が必要であることは確かだと思います。
ただ、フロントマンは、同時にいくつもの管理組合を担当し、日々そこで起こる問題に向き合い対応していますので、フロントマンは実践的な経験値を日々蓄積していると思います。
では何のために国土交通省は似たような専門資格である「マンション管理士」をわざわざ作ったのでしょうか。
それは、管理組合が判断すべき案件には、管理会社の利益と相反することが多いので、管理会社の他にも100%管理組合の立場で助言ができる専門家が必要になることを想定しているのだと思います。
管理会社の利益相反になる事ってどんなこと?
一番わかりやすいものは、管理会社との管理委託契約です。
新築の時から同じ管理会社との契約が続いているマンションは多いと思います。
そして原始契約は、デベロッパーが契約内容を決めていますが、管理会社がその子会社である場合はなおさら、しっかりと管理会社に利益が残るような契約にしているのが普通です。
契約は1年更新ですから、管理組合が契約内容に疑問を持てば、交渉したり、委託先をリプレースしたりすればよいのですが、その検討の際に、現在の契約相手である管理会社に相談すべきでしょうか?
また、管理会社の収益の30~50%は管理組合からの修繕工事によるものと言われています。管理組合が、この修繕は今すべきか否か検討している時に、高い確率で工事を受注できる立場にいる管理会社から、100%客観的な助言がもらえるでしょうか?
管理組合から直接発注する場合でも、管理会社に複数社に見積もりをとるよう依頼すると、発注が決まった先から管理会社へ紹介料(バックマージン/リベート)が入る業界慣習になっていますので、やはり管理会社は利益相反の関係にあるといえると思います。
フロントマンは同時に複数(多い場合は10~15)の管理組合を担当していますので、すべての理事会の準備・出席・議事録作成、そして出納・会計だけでも、かなりの業務量になります。
そのような中で、特定の管理組合からあれこれ調べてほしいという依頼があったときに、できるだけ手をかけずに対応したくなる気持ちも理解できます。
だからこそ100%管理組合の立場に立てる専門家であるマンション管理士の助言が必要となることがあるのです。
マンション管理士の活用は義務付けられてはいないの?
団長の個人的な推測では、国土交通省としては、各管理組合にマンション管理士の活用を義務付けたいのだと思いますが、民間の所有物の管理方法に、そこまで強制する法律を作るのは簡単ではないため、マンション標準管理規約(及びコメント)の改訂や、マンション管理センター、地方自治体などで、できるだけマンション管理士の活用を促して、各管理組合が「自主的に」マンション管理士を活用していく商習慣を創りたいのだと思います。
では、どのようにマンション管理士を活用していくか、「専門家の活用方法」の記事で解説します。
<管理組合応援団 団長>