設計監理方式と責任施工方式の違い

100年価値を保つには

大規模修繕工事の2年前にやるべきこと」に記載したとおり、大規模修繕委員会の設置と長期修繕計画の見直しをして、いよいよ大規模修繕工事をする方針が固まったら、発注方式の検討がはじまります。

マンションの大規模修繕工事の発注の仕方には、主に設計監理方式と責任施工方式の二つの選択肢になることが多いと思います。
この二つの方式の一番の違いは、設計する会社と施工会社を分けるかどうかです。

設計監理方式建築設計事務所や修繕工事コンサル会社が調査診断・修繕設計・
工事監理を担当し、施工会社に工事を発注する方式
責任施工方式調査診断から施工までのすべてをひとつの会社に任せる方式

「監理」という使い慣れない熟語がでてきますが、これは、管理組合の代理として、設計通り工事が行われているかをチェックし、現場の実情に合わせ、工事の進め方や工法などについて施工者と打ち合わせる業務です。「たけかん」と称されるスケジュール、安全、予算などの「管理」も重要ですが、「さらかん」と称される「工事監理」もとても重要な業務です。

世の中のマンションはどちらを選んでいる?

どちらを選ぶかは、マンションの規模と管理組合の考え方に左右されます。
平成30年度マンション総合調査によると、小規模のマンションでは責任施工方式の方が多く採用され、規模が大きくなると設計監理方式が多くなる傾向にあります。

規模設計監理方式責任施工方式その他・不明
30戸以下25.0%50.9%24.1%
31~75戸33.1%47.8%19.1%
76~150戸33.8%46.1%20.1%
151~500戸53.2%27.9%18.9%
501戸以上57.1%23.8%19.1%
平成30年度マンション総合調査 大規模な計画修繕工事実施時の発注方式(規模区分を編集し再計算)

また、別の設問では管理委託契約先の管理会社を施工会社に選んだマンションは全体の28.3%と高い数値となっており、これらの結果から、大規模修繕工事における管理会社の存在感はかなり大きいといえます。
おそらく責任施工方式においては、かなり高い割合で管理会社が工事を受注しているのだと考えています。

それぞれの方式のメリット・デメリットは?

メリット
設計監理方式・施工会社の選定と工事価格の妥当性、透明性が得られる
 その結果として、総費用を抑えられる
・管理組合側に立った工事監理や工事監修が実施できる
・組合員への説明会など専門的な知見をもって応できる
責任施工方式・調査診断から施工後のチェックまで多くのプロセスを
一社が担当するので、管理組合の交渉相手が一本化できる
・全てのプロセスを一社が請け負うので、万一の際の責任の
所在(施工会社にある)が明確
デメリット
設計管理方式・コンサルタント会社の選定作業
・コンサルタント費用
責任施工方式・施工会社の選定と工事価格の妥当性、透明性に課題
 その結果として、総費用が高額になる可能性がある

工事や設備の専門家ではない管理組合が専門知識と経験をもった施工会社に発注する場合、管理組合側で施工会社に対抗できる知識を持って交渉にあたるためには、コンサルタントを起用する費用は必要経費であるといえるでしょう。

しかし、小規模でそれほど価格も大きくならず、管理組合の理事の中に工事の妥当性や価格をある程度判断できるメンバーがいらっしゃる場合で、日ごろから関係が良好で信頼をおける管理会社であれば、責任施工方式で管理会社に発注する方が管理組合の負担が少なく、良い結果が得られる場合もあります。

中規模以上のマンションは設計監理方式がお勧め?

団長としては、少なくとも中規模以上のマンションは、総費用の節減効果という点だけを見ても、設計監理方式をお勧めしますが、一つ気を付けなければならない点があります。

建設業界はリベートやバックマージンが商習慣として昔から当たり前のように存在しており、設計監理方式で管理組合と契約したコンサルタント会社が施工会社と裏でつながっていて、施工会社選定や工事費の妥当性などの面でメリットが得られるどころかデメリットになっているケースが頻発していたことがあります。
リベートやバックマージンは商習慣であって違法取引ではありませんが、管理組合の専門知識不足に付け込んだ利益相反行為のあまりのひどさに平成29年に国土交通省が不適切コンサルタント会社との取引について警鐘を鳴らす通達を出したことがあるほどです。
リベートやバックマージンは、対象の取引との関連性を残さないように処理されるので、管理組合が独自に裏をとるのはまず不可能なので、コンサルタント会社と契約する際には、リベートやバックマージンは受け取らないことを宣誓させるとともに、施工会社を選定するときには、募集の発信も応募の受付も管理組合自身が窓口になるなどの工夫が必要です。

管理組合が専門家のサポートを得るために契約するコンサルタント会社さえも疑わなければならない現状は大変残念なのですが、中には公正な取引をモットーとするコンサルタント会社もありますので、管理組合がそういう会社を選ぶことによって淘汰がなされ、公正な取引が当然となる時代がくることを期待してやみません。

<管理組合応援団 団長>

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