大規模修繕工事の2年前にやるべきこと

100年価値を保つには

大規模修繕工事の時の理事は大変だと聞くけど、自分が理事の年でなくて良かった~、などと安心していらっしゃいませんか?
大規模修繕工事は、2~3年前に本格的な準備を始めていないと、困るのは2年後の理事会、、、ではなく結局「管理組合」すなわち皆さん自身がそのつけを払わされることになってしまうのです。

理事になったら、次の大規模修繕工事に向けて何を準備すべきか、是非理事会で議論していただきたいと思います。

大規模修繕工事のために、長期修繕計画があるんじゃないの?

確かに、長期修繕計画は大規模修繕工事の時期と金額の目安を示しています。しかし、あくまで「目安」であって、その通りに大規模修繕工事をしないといけないわけではありません。

もし、大規模修繕工事の1回目の時期が未到来のマンションであれば、その工事の実施時期は、かなりの確率で当初の長期修繕計画よりも後ろ倒しすることになると思います。

その理由は、大半のデベロッパーが設定する長期修繕計画の大規模修繕工事の周期に用いられる「12年」は、かなり昔の国土交通省が提示したガイダンスに一例として掲載された修繕サイクルを図式の周期が12年だったことを根拠にしたものですが、現在の建築資材や設備の耐用年数は、そのガイダンスが出されたころよりもずっと長くなっているのです。
わかりやすい計算をすると、周期12年のマンションと、周期18年のマンションでは、築36年で大規模修繕工事の1回分の差が出ます。中規模のマンションで億円単位、大規模マンションなら十億円単位で修繕費用総額が変わってきますので、時間をかけてじっくり検討すべき点のひとつだと思います。

デベロッパーが初期に設定した長期修繕計画は、見直しが必要であることは、「長期修繕計画って見直すものなの?」の記事に詳しく書きましたので、ご参考にしてください。

計画に見直しが必要なら、管理会社が助言してくれるのでは?

計画の見直しは管理組合にとって、非常に大事な判断になるのですが、その時に一番頼りになりそうな管理会社は、残念ながら100%管理組合の立場にたった助言ができません。
なぜなら、彼らにとって大規模修繕工事は貴重な収益機会であるからです。最近でこそ、あからさまに工事を推し進めようとする会社は減ってきましたが、本来は、管理会社は工事を先送りしたり、規模を縮小したりする提案はしたくない立場にいるのだということを覚えておきましょう。

ですから、まず大規模修繕工事に向けて、その実施時期や内容について、管理組合が主導して検討を進められることがとても大切になります。

とはいえ、理事会のメンバーだけで、大規模修繕工事に対応しようとするのは大変です。大規模修繕工事は、その準備・業者選定・施工・完了まで数年を要します。その間、輪番制の理事が毎年引継ぎをしながら進めていくには、継続性の観点から非常に難しいので、大規模修繕工事に特化した専門委員会の「大規模修繕委員会」を理事会の下部組織として設置することをお勧めします。委員会の任期は自由に設定することができますので、腰を据えて大規模修繕工事に向き合う体制をつくることができます。

平成30年度マンション総合調査によると、専門委員会を設けているマンションは全体で3割程度ですが、規模が大きくなるにつれ設置率が高くなり、500戸以上のマンションでは8割以上が何らかの専門委員会を設置しています。
そして、専門委員会を設けているマンションでは、8割以上が「大規模修繕や長期修繕計画に関する委員会」を設置しています。

大規模修繕委員会の設置は総会マター?

標準管理規約では、

(専門委員会の設置)
理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。
2 専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。

マンション標準管理規約(単棟型) 第55条

となっていますので、基本的には理事会権限で設置が可能です。
大規模修繕委員会は、是非専門家の助言が必要になる場面も多いと思います。また、長期修繕計画を見直す場合は、簡易な劣化診断をすることをお勧めしたいので、理事会決議で委員会発足の後、活動に必要な費用について総会で承認をとるのがよいでしょう。

メンバーについては、日ごろからマンションの管理に問題意識をもって、意欲をもって取り組んでいただける方が望ましいです。理想を言えば、建設会社や建築設備関係のお仕事をされている方がいると心強いのですが、いらっしゃらなくても、専門家の助言があればその点はカバーすることができます。
また、あまり人数が多くなりすぎると、意見がまとまらなくなってしまうので、少数かつ多面的な考えを検討できるメンバーが理想ですね。

高い問題意識を持つメンバーが一生懸命時間をかけて議論していると、時に理事会との連携が後回しになってしまい、総会直前に検討結果を理事会に諮った結果、理事会と意見が対立してしまう、などということも起こりがちです。
委員会はあくまでも理事会に答申する下部組織ですので、その点を見失わないように、委員会運営の細則をあらかじめ規定しておくのもよいでしょう。

大規模修繕委員会はまず何から始める?

長期修繕計画を5年以上見直しをしていないようでしたら、その見直しから始めましょう。そのために簡易の劣化診断を実施すれば、そもそも2年後に大規模修繕工事をすべきかどうかの判断はできると思います。

診断の結果、計画通り大規模修繕工事をするという方針になれば、次にすべきことは、工事の発注方式の検討です。

発注方式には主に以下の2つがあります。

設計監理方式建築設計事務所や修繕工事コンサル会社が調査診断・修繕設計・
工事監理を担当し、施工会社に工事を発注する方式
責任施工方式調査診断から施工までのすべてをひとつの会社に任せる方式

最大の違いは、設計する会社と施工会社を分けるかどうかですが、2つの方式のメリット・デメリットについては、「設計監理方式と責任施工方式の違い」の記事で解説しますので、そちらもご参考にしてください。

2年前にやるべきこと まとめ

以下のような事項が、1年前の総会までに決まっているとよいでしょう。

理事会(必要に応じて)簡易劣化診断、長期修繕計画の見直し
理事会(必要に応じて)助言をもらう専門家リストアップ
2年前の総会<議案(普通決議)>
・大規模修繕工事の実施の発意について
・大規模修繕委員会の発足について
・(必要に応じて)長期修繕計画の修正について
・(必要に応じて)専門家の選定について
大規模修繕委員会発注方式の検討
理事会大規模修繕委員会から発注方式について理事会に具申
理事会で方針決定
大規模修繕委員会(設計監理方式で発注する場合)
設計監理を依頼するコンサルタント候補リストアップ
1年前の総会<議案(普通決議)>
・発注方式について
・調査診断の実施について
(設計監理方式で発注する場合)
・コンサルタントの選定について

もちろん、初回の大規模修繕工事の場合は、なかなか勝手がわかりませんので、2年前の定時総会ではほとんど何も決められていない場合も多いと思います。
その場合は、臨時総会を開催するか、期中に説明会を実施して、一度の総会でまとめて決議を取るという手順もありますが、早めに準備を開始することにマイナスはありません。

2年前の理事会は実際の工事期間は理事ではないことが多いので、なかなか自分ゴト化するのは難しいと思いますので、早めに大規模修繕委員会を立ち上げて、委員会にスケジュールをリードしてもらうことをお勧めします。

2年前からの準備が確認できましたら、「大規模修繕工事の1年前にやるべきこと」に進みましょう。

<管理組合応援団 団長>

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