大規模修繕工事の1年前にやるべきこと

100年価値を保つには

さあ、いよいよ大規模修繕工事を翌年に控え、その準備も本格化してきます。
もし、2年前にやるべきことの確認がまだでしたら、まずそちらからご覧ください。
こちらにも2年前にやるべきことのまとめを掲載しておきます。
「やるべき」と書きましたが、これが2年前にできていればスムーズだというくらいで考えてください。

理事会(必要に応じて)簡易劣化診断、長期修繕計画の見直し
理事会(必要に応じて)助言をもらう専門家のリストアップ
2年前の総会<議案(普通決議)>
・大規模修繕工事の実施の発意について
・大規模修繕委員会の発足について
・(必要に応じて)長期修繕計画の修正について
・(必要に応じて)専門家の選定について
大規模修繕委員会発注方式の検討
理事会大規模修繕委員会から発注方式について理事会に具申
理事会で方針決定
大規模修繕委員会(設計監理方式で発注する場合)
設計監理を依頼するコンサルタント候補のリストアップ
1年前の総会<議案(普通決議)>
・発注方式について
・調査診断の実施について
(設計監理方式で発注する場合)
・コンサルタントの選定について

1年前にやるべきこと まとめ

上の表(2年前にやるべきこと)と続きで見られるように、1年前にやるべきことのまとめの表から(設計監理方式で進めるケースで)見てみましょう。

1年前の総会
(上表の続き)
<議案(普通決議)>
・発注方式について
・調査診断の実施について
・コンサルタントの選定について
大規模修繕委員会コンサルタントによる予備調査の実施
住民アンケートの実施
大規模修繕委員会
理事会
予備調査および住民アンケートの結果から
本調査・診断箇所および方法の決定
住民へ本調査・診断のスケジュール周知
大規模修繕委員会コンサルタントによる本調査・診断の実施
大規模修繕委員会
理事会
本調査・診断結果報告
大規模修繕委員会
理事会
修繕基本計画案の作成
住民説明会
大規模修繕委員会見積要領書の作成、施工会社候補のリストアップ
大規模修繕委員会
理事会
施工会社の競合実施
施工会社の選定案を決定
直前の総会<議案(普通決議)>
・大規模修繕工事の内容・工事費・工期について
・資金計画(必要であれば借入や一時金徴収)について
・施工会社の選定、工事請負契約の締結について

ここには理想的なスケジュールを示しましたが、ここまで着実に準備を進められるケースの方がまれだと思います。まずは工事実施までに、かなりのプロセスが必要だという認識を持っていただければと思います。
そして、早めに大規模修繕委員会を発足したり、専門家に助言を求め、工事の準備をリードしてもらうと、理事会の負担はぐっと軽くなるのでお勧めです。

コンサルタントの役割は?

設計監理方式と責任施工方式との一番の違いは、コンサルタントがいるかいないかです。
調査診断・修繕計画の策定・施工会社選定・工事監理がコンサルタントの役割になります。詳しくは「設計監理方式と責任施工方式の違い」をご覧ください。
マンション管理士などの専門家との役割分担がよくわからないと思われがちですが、少なくとも準備開始の段階から、コンサルタントの選定までは、マンション管理士に伴走してもらうと心強いと思います。残念ながらコンサルタントが施工会社と裏でつながっているケースも珍しくない業界ですので、マンション管理士がいれば、そのけん制にもなるでしょう。
また、修繕計画の基本計画を策定する際に、想定よりも工事費が大きくなり、資金計画(修繕積立金計画)の修正が必要になる場合は、マンション管理士の専門領域になります。

責任施工方式の場合は、施工会社が調査診断・修繕計画の策定から全てを担うので、より厳しい監視が必要になります。よほどの専門家が理事や委員会の中にいない限りはマンション管理士の伴走してもらうことを是非お勧めします。

調査・診断はどんなことをするの?

調査診断・施工設計までは大規模修繕工事に向けて必ず必要となるのが、工事箇所を特定するための調査診断の実施です。
目視でわかるものは、

  • 鉄部の錆び
  • コンクリートのひび割れ、爆裂、エフロレッセンス
  • 防水材や塗装・塗膜の浮き・破れ、タイルの浮き
  • シーリング材のひび割れ
  • 雨漏り
  • 汚れ、変色

目視ではわからないものは、

  • コンクリートの中性化進度、圧縮強度を測るためのコア抜き検査
  • はつり調査による鉄筋の腐食状況、鉄筋径、かぶり厚さを確認
  • シーリング材や屋上防水材の一部をサンプリングして針入度試験で硬度測定、引張試験で劣化度を測定
  • 外壁タイルを赤外線や打検で浮きを調査、接着力試験機で付着力を測定
  • 給排水管のX線検査や内視鏡検査でさびこぶや腐食の調査

などがあります。
それから、エレベーターや給水ポンプ、貯水槽、機械式駐車場などの設備は日ごろの点検や小修繕の記録も修繕計画の参考にします。

バリューアップ工事の検討はいつする?

大規模修繕工事の目的は、「マンションの性能を新築時に戻すこと」と、「マンションの仕様を今の時代に近づけること」の2つがあります。
特に後者は、住民にとってのお楽しみですので、工費とのバランスを見た上で、積極的に検討をしたいものです。

本調査・診断前に、住民アンケートを実施しますが、そのアンケートの中で、以下のようなバリューアップ工事の希望を聞きます。

安全面・耐震補強
・オートロックや防犯カメラ、防犯格子の設置など防犯対策
・水害対策のための設備設置など
使い勝手・バリアフリー化(段差解消、スロープ設置、エレベーター新設)
・宅配ボックス、壁貫通型郵便受け
・駐輪場の増設、駐車場の整備
外観・美観・外壁仕様変更(タイルなど)
・手摺や柵の仕様変更
・エントランスホールのグレードアップ
・表札、階数表示板、住戸案内板のグレードアップ
省エネ・LED照明への交換
・給水系統の変更(高置水槽や受水槽の廃止など)
・窓ガラスの複層ガラスへの変更

もちろんスペースや構造の面から、物理的に変更できないこともありますが、工事が終わって、住民から、「使いやすくなった」、「便利になった」、「グレードが上がった」といった感想がいただけると、嬉しいものです。

大規模修繕工事は、理事や委員のメンバーにとっては大変な負担ですが、マンション住民に喜んでもらえる機会でもありますので、それを楽しみに進められるとよいですね。

<管理組合応援団 団長>

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