自主管理マンションのメリットとリスク

コラム

管理会社に管理業務を委託せず、管理組合が直接清掃業者や点検業者、工事業者に発注し、管理している形態を「自主管理」といいます。

自主管理のメリットは、なにより管理コストが抑えられることですが、管理組合の運営面でも良い点があります。理事会への信頼度が高く、様々な課題に対して合意形成が得られやすい傾向があり、管理会社へ全部委託しているマンションよりも、管理組合がうまく機能しているところも多いと思います。

数人の献身が自主管理を支えている

自主管理は、理事長他キーマンとなる数人の役員が、ご自身のかなりの時間を割いて管理組合運営を支えている構造となっているケースが多いのではないでしょうか。時間にゆとりがあって、自宅マンションへの貢献にやりがいを感じ、リーダーシップと的確な判断力を持った方が複数人いる場合は、自主管理はとてもよく機能します。

西京極大門ハイツ

京都にある西京極大門ハイツという1976年築190戸のマンションは、先進的ですばらしい管理組合運営をしていることで大変有名な自主管理マンションです。
このマンションは、グレードアップを重視した修繕工事や省エネ改修、後から買収した共有施設を活用したコミュニティ活動、独自の理事会・総会運営ルールなどが注目されていますが、管理組合の運営効率を上げる様々な仕組みを導入して、自主管理ながら全部委託の管理組合よりも楽に理事会を回せるようになっているそうです。

ただ一般的には、「自主管理マンション」といえば、管理会社が撤退してしまい、新たに別の管理会社と契約を結べる財務状態にないため、やむなく自主管理になったケースも多いと思います。そういうケースでは、日々の管理を回すのが精いっぱいで、管理組合自身が、どこに最も大きな問題があるのかさえ、客観的に評価できていない状況が考えられます。

自主管理マンションのリスク

自主管理となった経緯はどうあれ、自主管理マンションの特有のリスクは認識しておく必要があります。

最大のリスクは、これまでの説明でお察しの通り、管理組合のキーマンが何らかの理由で役員を続けられなくなるリスクでしょう。特に理事長がほぼひとりで管理組合の業務を抱え込んでいた場合、その理事長の病気や死亡などだけでなく、組合員からの心無い中傷などによって続けるモチベーションがなくなってしまったり、売却してマンションから出て行ってしまったら、あっという間に管理が回らなくなります
そうしたリスクを低減するためにも、いつでも理事長を交代できる人を、現理事長を含めて少なくとも3人は確保しておく。規模の大きいマンションなら、担当分野ごとに後継者(交代者)を育てておくのが理想でしょう。

そして、もうひとつのリスクとしては、理事長や会計担当による管理費や積立金の横領です。マンションのために汗をかいて頑張ってくれている理事長を疑うのは、大変心苦しいところですが、理事長は最初からそのつもりがあったわけではなくても「理事長一人の権限で銀行口座からお金を動かせる」という状態だった場合、横領事件のリスクは高まります。

管理費や積立金の横領は、なにも自主管理マンションだけでなく、管理会社の管理員やフロントによる横領事件も、減ったとはいえ相変わらず起き続けています。この場合、管理会社の社員の業務上横領ですから会社に賠償責任がありますし、その会社がマンション管理業協会の会員であれば、万一会社がつぶれてしまっても、管理費等の1ヵ月分は、マンション管理業協会から保証が受けられます

一方で理事長や理事が横領した場合は、管理組合はほとんど回収は望めないでしょう。管理組合が加入する火災保険で「管理組合役員賠償責任特約」を付保している場合でも、役員の横領の場合は保証対象外となります。
自主管理マンションに限った話ではありませんが、組合役員の横領が起きた際の損失回収リスクは、意外に認識されていないことが多いですね。

リスクを減らすには?

こうしたリスクを小さくするには、会計・出納業務だけでも管理会社に委託(一部委託)することをお勧めします。

また、理事長や役員にマンション管理士に就任してもらうことは、役員の成りて不足に有効で、他の役員も安心して引き受けることができるようになるでしょう。
自主管理マンションでは、マンション行政の新しい方針、最新マンションのトラブルに関する判例、新しい技術や工法、手法の事例などの情報を更新し続けるのは大変ですが、その点でもカバーしてくれるでしょう。

どちらもお金はかかりますが、管理会社への全部委託よりはコストを抑えられますし、なにより、これまで組合員自身が負ってきた業務負担とリスク負担を大きく減らし、将来の不安を解消できるならば、有力な選択肢の一つだと思います。

管理会社のような財務基盤のないマンション管理士に理事長を任せる場合、やはり、そのマンション管理士の横領リスクが心配になりますよね?
日本マンション管理士会連合会(日管連)では、日管連に所属し、認定マンション管理士の資格を有するマンション管理士であれば、日管連がそのマンション管理士の横領などの不正行為によって管理組合が被る金銭的損害を上限3億円まで保証する制度がありますので、管理士選びの参考にしてください。

<管理組合応援団 団長>

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