定期借地権付きマンションのメリットは?

コラム

新築マンションの広告を見た時に、「あれ?なんでこんなに安いの?」とよく見たら、定期借地権付きマンションだった、という経験ありませんか?
法律的な違いは、敷地権が所有権ではなく定期借地権だということですが、その価格のメカニズムをしっかり理解できれば、有力な選択の一つとなると思います。

購入時のメリットデメリットを解説しているサイトはたくさんありますので、他ではあまり語られることのない「管理」や「終活」に着目してお伝えしたいと思います。

寿命が決まっていることが2番目のメリット

定期借地権付きマンションの1番目のメリットは、購入価格が安い、ということですね。では2番目のメリットは何でしょう。

多くの解説では、土地に関する固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税がかからない、という点を挙げていますが、個都税については、代わりに地代負担があります。不動産取得税と登録免許税は、購入時の諸経費が少し安くなる程度ですので、特別なメリットというほどのものではないでしょう。

団長は、2番目のメリットとして「マンションの寿命が決まっていること」を推したいと思います。

それはデメリットの間違いでは?と思われるかたもいらっしゃると思います。

では例えば、ご自身が30代だとして、終の棲家として新築の分譲マンションを購入したと考えてみてください。60年後や70年後に自分の子や孫にそのマンションを相続することになると思いますが、子や孫はそれを喜ぶでしょうか?おそらく売却するかリフォームして人に貸すか、処分に頭を悩ませるのではないでしょうか。

これが定期借地権付きマンションだったとしたら、最後の期日が決まっていますので、期日前に相続が発生したとしても、期日までどうしたらよいか、答えはもっと簡単に見つかるでしょう。

マンションの「終活」は一大事業

普通のマンションは老朽化が進むと、大規模修繕をして延命するのか、「終活」するのか、「終活」するなら建て替えなのか敷地売却なのか、この合意形成には大変な労力が必要となります。

新築の時には、だいたい同じような家族構成で、住まいに対して同じような考え方の住民が集まりますので、管理組合の合意形成はそれほど難しくはないと思います。
これが築60年、70年経ってきますと、新築から住み続けている人の割合は低くなり、中古で購入した人も購入したタイミングはバラバラです。フルリフォームをした人もいれば全くしてない人もいるでしょう。また、賃貸に出す人も増えますので、経済的な状態も考え方もバラバラな人たちで構成された管理組合になっていることが想定されます。

そのような管理組合で、マンションにとって最も重要な意思決定といってもよい「終活」についての合意形成は簡単ではありません。何年も議論を尽くして、何度も住民説明会を開催して、必要に応じて住民の個別相談窓口もつくって対応するといった一大事業になります。
この事業がうまく進められないと、やがて終活に向き合おうとする人達が減っていき、最悪の場合、スラム化のリスクを考えなければなりません。

この一大事業を全くやる必要がないというのは、定期借地権付きマンションの大きなメリットではないでしょうか。

築後50年経ったとき、管理組合ではどんな会話をしているか

定期借地権が法律上の権利として認められたのが1992年ですから、50年以上経過した定期借地権付きマンションはまだ存在しませんので、想像力を働かせてみましょう。
例えば70年の定期借地権でしたら、50年後は残り20年です。管理組合では、おそらく最後となるであろう大規模修繕工事のタイミングや修繕箇所を検討している頃ではないでしょうか。

70年後に取り壊すとしたら、その間の大規模修繕工事は何回実施するかで、必要な修繕積立金の総額が大きく変わってきます。初期設定でデベロッパーが設定する12年周期で実施するなら5回やることになりますが、15年周期なら4回で済みます。18年周期なら3回ですね。大規模修繕工事の周期については、築浅の段階からしっかり合意形成をして満期までの長期修繕計画を策定しておくとよいですね。

そして、エレベータ、玄関扉、排水竪管、窓サッシなどは、通常、30~50年程度を目安に更新計画を立てますが、1992年以降に建てられたマンションでしたら、実際には70年もつ設備もあるでしょうから、劣化診断を定期的に実施して、できることなら更新なしでいきたい、などと議論しているのではないでしょうか。

定期借地権付きマンションは、賃貸化率が高くなる?

借地権の残存期間が短くなってくると、そのマンションを中古で購入する層が限られてきます。その買い手とは、収益物件として投資利回りで価値を計算する「投資家」で、キャッシュで物件を買える人です。残存期間が短い場合は、満期後は価値がゼロになるマンションを、自分が住む家として購入する人はほとんどいないでしょう。

終の棲家のつもりで購入した人も、様々な理由でその家を出なければならなくなることもあると思います。その時に、数少ない買い手が満足する低い価格で手放すのがばからしいと考えた場合は、売らずに満期まで他人に貸すという選択になります。つまり、定期借地権付きマンションは、経年とともに賃貸化率はどんどん高くなっていくでしょう。

そうなると、管理組合の意思決定は、ワンルーム投資用マンションなどと同じような傾向になり、修繕に使うお金は最低限にしたいという意見が強くなります。ただ、あまりに使い勝手や見た目が悪ければ、部屋の借り手がいなくなってしまうので、そうならない塩梅で極力お金をかけない運用になるのだと思います。

それでも60年や70年で取り壊すのはもったいないのでは?

たしかに、最近のマンションはしっかり管理をしていれば、100年以上価値を保ち続けられる仕様になっています。
定期借地権付きマンションも、70年もてばいいという造りではなく、一般の分譲マンション並みかそれ以上の仕様で建てられたものが多いのも事実です。
そして、満期が近づいてくると修繕にお金をかけたくないという意思が働いて、最後は住み心地の良くないマンションとしてその生涯を終えるというのは、ポテンシャルの無駄遣いであり、非常にもったいない話です

そこで、最近は満期時に解体して更地にするという選択だけではなく、信頼ある事業者もしくは地主がマンションを丸ごと買い取ってワンオーナーとなって、賃貸経営を続けていくというオプションも用意された契約も出てきています。
法律的には「建物譲渡特約付き定期借地権」といいます。満期時にボロボロになっていれば、解体するしかなくなりますが、建物を買い取ってくれるチャンスがあるなら維持修繕に必要な費用を投下し続けるモチベーションにもなりますね。

この仕組みは、地球環境のためにもとてもいい仕組みだと思います。既存の定期借地権付きマンションにおいても、事業者、地主、そして区分所有者全員が合意すれば、後から契約を変更することは可能ですので、是非、この方式が普及することを期待しています。

<管理組合応援団 団長>

タイトルとURLをコピーしました