機械式駐車場は金食い虫?

駐車場関連

管理組合にとって機械式駐車場は、貴重な収入をもたらす稼ぎ頭でしょうか?それとも維持管理にばかりお金のかかる放蕩息子でしょうか?

ほとんどのマンションでは、新築時は貴重な収入源になっていたのだと思います。しかし、今は機械式駐車場にとって厳しい時代になりつつあります。

特に管理組合の収入の中で、駐車場収入の占める割合が多いマンションは要注意です。

なぜ機械式駐車場の空き区画が増えてきたの?

その昔、「駐車場付置率100%!」が新築マンションのセールストークになる時代がありました。そして、豪華な共用施設を競い合い、駐車場収入によってそれらの施設を維持する収支設計がなされた時代がありました。

日本の自動車の保有台数は、2000年ごろから、それまでの右肩上がりの増加傾向から、横ばい傾向へと変化してきました。その一方で、駐車場の台数は現在に至るまで増え続けていることから、駐車場需要が相対的に低下してきているといえます。
消費者の趣味の多様化や公共交通の利便性向上などによって、ここ10~20年は消費者が自動車を保有しようとする動機が相対的に弱くなってきたことは、多かれ少なかれ実感できるのではないでしょうか。

また、機械式駐車場特有の弱点として、ここ最近主流となってきた車高の高いSUVやミニバンが標準的な機械式駐車場には入らない、ということで、せっかくの需要を逃してしまうケースも多くなっています。

マンションの管理組合の立場からすると、駐車場は新築の時から設置され、その区画数に応じた駐車場収入を予定していますので、空き区画が増えれば収入減に直結します。既に、収入減によって管理会計が赤字に転じたマンションも増えてきました。

今後、また駐車場の需要が高まることはないの?

残念ながら、トヨタ自動車グループのシンクタンク2020年12月に公表したレポートによると、消費者の乗用車保有台数は今後低下する予測となっています。2019年の保有台数に対して2030年で約-10%、2035年には約-13%に減少すると予測されています。

なお1733市区町村を足し上げた乗用車保有台数の総数は2019年の6170万台に対して2030年で約-10%の5555万台、35年で約-13%の5362万台と予測された。

出所:2020.12.22 株式会社現代文化研究所 自主研究レポートから抜粋

団長の個人的見解では、マンションの駐車場の空き区画が増える傾向は、これから加速するのではないかと考えています。カーシェアリングの普及は始まったばかりでマンション駐車場への影響は、これから本格化してくるのではないかと思います。

そうなるとしたら、今空き区画が目立ってきた機械式駐車場は、これからの維持費を抑制することを検討すべきなのではないでしょうか。

機械式駐車場の維持費はどれくらい?

2021年9月に国土交通省が改訂した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」に一般的な機械式駐車場の修繕費が掲載されています。

機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費

機械式駐車場の機種機械式駐車場の修繕工事費
(一台当たり月額)
2段(ピット1段)昇降式6,450円/台・月
3段(ピット2段)昇降式 5,840円 /台・月
3段(ピット1段)昇降横行式 7,210円/台・月
4段(ピット2段)昇降横行式 6,235円 /台・月
エレベーター方式(垂直循環式)4,645円 /台・月
その他5,235円 /台・月

平置きの駐車場であれば、コストはほぼかからないので、空き区画があってもマイナスにはならないと言えますが、機械式駐車場は、修繕工事費が必ずかかりますので、空き区画は修繕工事費分だけ管理組合のお財布を減らし続けます。

上表の係数をご自宅マンションの空き区画数を掛け合わせ、年間の金額にしてみてください。
空き区画が増えるほど、無駄な支出が増え続けることになるのです。

駐車場の使用料を修繕費として積み立てればよいのでは?

機械式駐車場のある多くのマンションは、駐車場使用料が年間の維持点検費を上回っていると思いますので、上回った分を修繕費として積み立てれば、将来の積立金不足などの問題は起きにくいはずです。

まさに、国土交通省が提示する標準管理規約では、「駐車場使用料は、その管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる」とあります。機械式駐車場のあるマンションの規約もそれと同様の条文になっていることが多いと思います。

しかし実態は、修繕積立金に回ることはなく、管理費に充当されているケースがほとんどです。使用料収入を管理費に使えなければ、管理費会計が赤字になってしまう設計になっているのではないでしょうか。

標準管理規約の条文に反する運用を前提として、デベロッパーが新築時に駐車場収入を一般の管理費に充当して管理費を低く抑える設定にしていたというのは、業界の都合(販売しやすさ)を優先した結果なのだと思います。

管理費に充当するか修繕積立金として積み立てるべきかの議論は別として、どちらに充当するにしても駐車場の使用料が減ってきているのであれば、値上げによって収入を増やすか、管理費もしくは将来の修繕費を減らすかの施策を打たなければなりません。
その施策については、機械式駐車場の平面化とは?の記事で解説します。

<管理組合応援団 団長>