マンション総合保険また値上げ?

マンションの防災

2022年10月に、マンション総合保険(火災保険)の保険料が改定されます。
今回は全国平均で10.9%の値上げとなります。
2015年以降これまでに3回改定がありましたが、平均3.5~5.5%の値上げでした。過去数回に比べると今度の値上げは相当にインパクトを感じると思います。

値上げの要因は、台風やゲリラ豪雨などの自然災害が毎年のように発生していることと、高経年マンションの増加で、漏水事故などが増加傾向にあることです。

地域による差、築年数による差も大きい

一般的なマンションの構造である鉄筋コンクリート等の耐火構造(M構造)の地域格差と築年数の改定率比較です。

地域都道府県築5年未満
改定率
築10年以上
改定率
三大都市圏東京都+1.7%+7.3%
三大都市圏大阪府+15.3%+21.5%
三大都市圏愛知県+4.5%+9.3%
改定幅最大宮崎県+30.5%+33.0%
改定幅最小山形県▲4.7%+1.1%
損害保険料率算出機構 2021年6月公表資料より

上表の通り、大阪府や宮崎県のマンションは、非常に大きな値上がりになりますので、今後対策を余儀なくされることになると思います。

また、今回の値上げ幅が平均10.9%といっても、例えば5年更新の契約で、前回の契約更新が2018年だったとすると、次は3回の値上げ後の数字になりますので、前回の保険料から2割以上の値上げになると試算されます。そしてこの期間に築年数のランクが変わっている場合は、3割から4割の値上げになっていてもおかしくありません。

値上げを抑える方法は?

ひとつは、相見積もりです。

多くの管理組合は、管理会社が代理店となっている損害保険会社から相見積もりをとる、ということになると思います。

もし、その見積もり金額にあまり違いがなかった場合は、管理会社が代理店となっていない保険会社まで、見積もり対象を拡大してみるという方法があります。
その場合は、損害保険会社の専門代理店を通じて、見積もりをとってみましょう。
管理会社ではない保険代理店として契約した場合、保険の請求事務などで管理組合に面倒が生じるかもしれないという懸念があるかもしれませんが、管理会社と保険会社の間に一社入るだけなので、管理組合にとっては、事務フローの面でその違いを感じることはほとんどないと思います。

管理状況の評価が保険に反映される?

2022年4月からスタートした「管理計画認定制度」で認定を受けた場合、あるいはマンション管理業協会が同時にスタートさせた「マンション管理適正評価制度」の評価によって、保険金額に割引が受けられるような仕組みが検討されているようです。

そして、日本マンション管理士会連合会のサービスであるマンション管理適正化診断サービスは、その診断結果によって日新火災の保険料が割引になる仕組みが既に確立しています。
この診断サービスは、保険の契約が条件にはなっていませんので、これまで外部の専門家から自分たちのマンションの管理状況について、客観的に評価をしてもらったことがない管理組合でしたら、無償ですので是非一度お試しされることをお勧めします。

マンション管理適正化診断サービス パンフレットより

保険の内容を見直す

本来、被保険者の状況やニーズに応じて保険の契約内容の見直しを提案することは、保険の代理店の付加価値のひとつだと思います。

その点、専業の保険代理店業であれば、的確なアドバイスをくれると思いますので、是非一度お話をきかれるとよいと思います。
例えば以下のような見直し項目を、相談してみてください。

見直し項目見直し内容
補償金額不相応に高額になっていないか確認
免責金額の設定少額の事故は保険請求しない方が事故率が下がり、次の契約更新時の保険料ランクを下げられ、結果的に管理組合負担額を下げられる場合がある
水災担保の付保ハザードマップ(内水氾濫、外水氾濫)や過去の歴史からみても、水災の懸念はないと判断できる場合は、付保を外すことを検討
地震保険の加入例えば住宅性能評価で耐震等級3の建物なら、地震保険を請求するケースは考えにくいという判断もある一方、熊本地震では新耐震基準の建物にも被害が出ていることから、総合的な判断が求められる
個人賠償責任保険の付保専有部分が原因の漏水事故は、専有部分の区分所有者の保険で補償をするべきという考え方が、すべての区分所有者に徹底できるなら、付保を外すことを検討

どの項目も、「継続」「現状維持」「前例踏襲」が一番楽な結論です。保険に限らず、管理組合がこれまで続けてきたことを変えるのは、本当に大変なことです。

それでも問題を先送りせず、自分達で真剣に検討を重ねて最良の結論を導き出そうとするなら、その姿勢は必ず組合員に伝わりますし、最終的には賛同をえられるのではないでしょうか。
自分たちにとっての最適は何かを議論することは、分譲マンションで失われがちな主体性のある活動の一歩ですから、それはとても意味のあることだと思います。

<管理組合応援団 団長>