マンションで置き配はあり?

コラム

急速に普及し始めた「置き配」利用。うちのマンションはオートロックだから、と始めからあきらめてませんか?

最近は、宅配業者がオートロックを解除して置き配できるサービスも開発されているので、住民から導入希望が管理組合に出されたとき、防犯防災上マイナスであるという理由だけで、深い議論なしにNGの結論を出してしまっていませんか?

今回は、分譲マンションの「置き配」対応の是非について考えていきたいと思います。

管理規約はどうなってる?

まず、管理規約はどうなっているか。国土交通省が公表しているひな形であるマンション標準管理規約には、そもそも「置き配」というサービスが日本で普及してきたのがここ最近のことですので、禁止とも許可とも記載はありません。

ただし、2021年の標準管理規約の改定で、条文に対するコメント(※条文に対する運用上の留意点などを示したもの)で以下の点が加わりました。

専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められないが、宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある。

マンション標準管理規約 2021年6月改定 第18条(使用細則)に関するコメント

「専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められない」ですから、逆に言えば、専用使用部分に指定されているアルコーブや玄関ポーチなどであれば、置き配は制限されない。ということが一つ。
そして、そうしたスペースがなく、玄関扉が直接共用廊下に面しているようなマンションでは、「例外的に置き配を認める場合には~に留意する」と記されています。
これは、共用廊下に個人の所有物が置かれることを頭ごなしに制限するのではなく、常識の範囲で運用してね。というメッセージだと解釈できます。

つまり、個々のマンションで自主的な運用ルールを設定する自由度は高いと言えるでしょう。

また、消防法上の「避難の支障となる物件が放置され、又はみだりに存置されないよう管理しなければならない」に抵触する懸念については、国土交通省は、「置き配の現状と実施に向けたポイント」の中で「避難の支障とならない少量または小規模の私物を暫定的に置く場合は、長期放置や大量・乱雑な放置等を除き社会通念上、法的問題にはならない」という考えを示しています。

防犯面ではどうなの?

この点が、激しく抵抗する人がいそうな論点です。

2022年11月現在で、オートロックのあるマンションで、置き配を可能にするシステムを実現しているのは、ヤマト運輸Amazonです。
どちらも、荷物の受け取り人の指示を受けてデジタルキーを発行し、その配達物を持った配達員がデジタルキーを端末で受け取り、デジタルキーでマンションのオートロックシステム(スマートロック)を解除してマンション内に入り、玄関に置き配する。という仕組みです。

それらのシステムにセキュリティホールはないのか?と疑えば、現状サービスがローンチしたばかりで、ハッキング事件は起きていませんが、今後起きないと言い切れるものではありません。
※AmazonはECサイトからの指示からデジタルキー発行、配送担当へのキー送信、個々のマンションのオートロックのシステム改修まで全てのプロセスをAmazonがパッケージしている一方で、ヤマト運輸はデジタルキーを発行・管理するプラットフォームで、ヤマト運輸以外の配送事業者も参加可能、デジタルキーで各マンションのオートロックを解除するシステムの開発もオープンにしていますので、各社がそれぞれの仕様で相乗りができる仕組みになっています。

ヤマト運輸 2022328 ニュースリリースより

ただし、仮にハッキングしてマンションのオートロックを解除することができても、それですぐに犯罪が成立するわけではありません。
従来からオートロックは、住人の後ろについて一緒に入ってしまえば突破出来てしまいますが、防犯上最も重要な部分は、個別住戸の鍵でしょう。
オートロックは、個別住戸の鍵と併せてセキュリティゲートを2重にすることで、犯罪の難易度を上げる、という効果を期待するものだと思います。

犯罪を試みる側にしてみれば、高度な技術とコストをかけて、スマートロックのハッキングしてオートロックを突破できても、それに見合うリターンは得られないのではないでしょうか。

また、対面受け取りの場合、宅配業者に成りすまして入室してくる犯罪も起きていることから、在宅していても置き配を選択するニーズもあるなど、置き配の導入が防犯上マイナスであるとは一概に言えない状況があるようです。

今後、新築マンションでは標準になる?

マンションのオートロックの主要メーカーであるパナソニックアイホンも、スマートロックに対応し始めていることから、今後の新築マンションは、スマートロックが標準装備されていくと思います。業界各社のリサーチによると、宅配ボックスの利用よりも、置き配の利用ニーズの方が高い調査結果もあるようですので、セキュリティの心配よりも、置き配の利便性が勝って普及していく方向にあると思います。
システムは標準装備されたとしても、運用(使用細則)に置き配が初期設定されるところまでいくかどうかは、今後着目していきたいと思います。

新築は、スマートロック対応が標準となっていくとしたら、既存の分譲マンションは、どうすればよいのでしょうか?

既存の分譲マンションでも設置は無料

新しいシステムの導入は、お金がかかるのが当たり前ですが、2022年11月時点で、既存のマンションのオートロックを置き配可能に改修する費用は、無料でサービス提供している会社があります。

なぜ、無料でサービス提供ができるのかといえば、マンションで置き配を実現することは、運送会社にとって大きなコストダウンにつながるからです。

国土交通省が公表している宅配便の再配達率は、2022年4月時点で11.7%となっています。つまり、宅配便の配達が10件に1件以上再配達をしなければならない状況ということです。置き配が普及すれば、再配達率は低減し運送会社のコストダウンとなります。

「運送業」はCO2を排出する主要業種のひとつです。再配達率を減らすことは、運送会社のコストダウンだけでなく、CO2削減に大きく寄与するため、国土交通省も置き配普及に前向きです。
ここで掲載した2つのサービスは、国土交通省が発行している「多様なライフスタイルをささえる持続可能な宅配の実現に向けた手引き」の中でも紹介されています。

国土交通省 「多様なライフスタイルをささえる持続可能な宅配の実現に向けた手引き」より

住民の利便性向上と持続可能な社会への貢献という観点から、皆様のマンションでも「置き配」対応をご検討されてはいかがでしょうか?

<管理組合応援団 団長>