令和4年度マンション管理士試験問題ピックアップ

コラム

今回は、マンション管理士試験の問題の中で、正解が2つとなり話題になった問題を使って、区分所有法の重要条文について深堀りをしてみたいと思います。

試験問題

マンションにおいて共同の利益に反する行為(この問いにおいて「義務違反行為」という。)を行う者に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

ア 区分所有者及び議決権の過半数による集会の決議があれば、義務違反行為を行う区分所有者に対し、他の区分所有者の全員が訴えをもって当該義務違反行為の停止を請求することができる。

イ 区分所有者及び議決権の各3分の2以上の多数による集会の決議があれば、義務違反行為を行う区分所有者に対し、他の区分所有者の全員が訴えをもって当該区分所有者の専有部分の使用禁止を請求することができる。

ウ 区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数のよる集会の決議があれば、義務違反行為を行う区分所有者に対し、他の区分所有者の全員が訴えをもって当該区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。

エ 義務違反行為を行う占有者に対し、当該占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求する場合、あらかじめ集会において当該占有者に弁明の機会を与えなければならない。

1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ

令和4年度 マンション管理士試験 (問9)

おそらく出題者の意図としてはイの「3分の2以上の多数」の部分が明らかな間違い(正しくは4分の3以上の多数)で、アウエの文章は正しく、正解は「3」という比較的簡単な問題にしたつもりだったのだと思います。
いくつかの資格専門学校の試験直後の解答速報も、「3」となっていました。

しかし、後日マンション管理センターから発表された解答は、2及び3でした。
つまりイ以外にも間違いと言われても仕方のない文章がひとつあるということです。

関連条文は第57条から第60条

アイウエの4つの文章は、それぞれ区分所有法第57条、第58条、第59条、第60条の条文内容の一部を説明した文章になっています。

これらの条文は1983年の区分所有法の大幅改正で加えられた非常に重要な条文で、その後のマンション関連の裁判ではたびたび登場してきます。

ア ⇒第57条 (共同の利益に反する行為の停止請求)
イ ⇒第58条 (使用禁止の請求)
ウ ⇒第59条 (区分所有権の競売の請求)
エ ⇒第60条 (占有者に対する引渡し請求)
区分所有法 対応条項

もう一つの誤りはどれか

正しい文章の個数を問う問題なので、イの他は、アウエのどれを「間違った文章」としても正解にしたのかは明示されていませんので、ここで考えてみました。

まずエについては、区分所有法においては、弁明の機会の「場」について記載はありませんが、エの文章では、「集会において」と限定しています。集会以外で弁明の機会を与えることは通常想定できないことから、ちょっと気持ち悪くはありますが、その部分をもって誤りといいきれないでしょう。

次に、アとウの文章を比べてみます。文章の構成は「・・・多数による集会の決議があれば、訴えをもってxxxを請求できる。」と全く同じで、「・・・(多数決の定数)」と「xxx(請求内容)」の部分について、第57条と第59条の違いをそのまま記述しているので、一見合っているように思えます。

まず、アの文章を、第57条の条文と比較してじっくり考えてみます。

区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。

2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。

3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。

4 前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。

区分所有法 第57条 (共同の利益に反する行為の停止等の請求)

条文では、共同の利益に反する行為の停止の請求は、訴訟を提起する場合は集会の決議が必要ですが、訴訟外で請求する場合は集会の決議は求めていません。
マンション標準管理規約(単棟型)の第67条にも、「理事会の決議で勧告・指示・警告ができる」とあるように、実際の運用でも、総会の開催を待たずに理事会決議で迅速な対応が求められるケースが多いでしょう。
アの文章は、「~決議があれば、~訴訟をもって~行為の停止を請求できる」という構成で、これを行為の停止を請求する条件の説明ととらえれば、訴訟外なら集会の決議は要しないので、誤りという考え方もできますし、「決議があれば、訴訟ができて、行為の停止請求ができる」と解釈するなら正解なのかもしれません。

誤りはもうひとつあるかも?

では、第59条関連のウはどうでしょうか。

第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共有部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。

2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。

3 第一項の規定による判決に基づく競売の申し立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。

4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買い受けの申し出をすることができない。

※第五十八条第二項⇒前項の決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数でする。同第三項⇒第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。)

区分所有法 第59条 (区分所有権の競売の請求)

競売請求の場合、訴訟は必須ですので、アの文章で指摘した論点は問題ありません。しかし、競売請求は、行為の停止請求よりもずっと厳しい措置ですから、集会の決議が必要十分条件ではありません。①その行為によって共同生活上の障害が著しく②他の方法ではその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難である場合、の2点の前提条件があった上で、決議前に弁明の機会を与えて初めて集会の決議をして訴訟により競売を請求することができるのです。
ですから、単に「集会の決議があれば、競売請求できる」という文章のウも誤りという見方もできると思います。

解答作成者がイに加えて、もうひとつの誤りをアウエのどれにしたのかは不明ですが、いずれにしても、区分所有法の非常に重要な条文についての問題であるのに、明確な正解を出すことができなかったことは残念ですね。

しかし、改めて区分所有法の重要条文を見直すきっかけになったのは、よかったのかもしれません。

<管理組合応援団 団長>