機械式駐車場にEV充電器は設置できる?

駐車場関連

都心部の分譲マンションの駐車場の多くは、機械式駐車場です。EVの普及を見据えてEV充電器の設置を検討している管理組合の皆様に、業界情報を「EV充電器の設置を要望されたら?」でお伝えしました。
その記事をアップした時点(2022年4月)では、設置場所は平置き駐車場を前提としたご案内となっていました。
機械式駐車場への設置は、その時点では地下パレットの設置はNGで、地上階でも1パレットあたり100万円を超える設置コストと言われていましたので、補助金が出たとしても、設置に向けた管理組合の合意形成がかなり難しい状況だったからです。

しかし、今回、ユアスタンド社ニッパツパーキングシステムズ社が機械式駐車場用の充電設備を共同開発したという発表があり、大きな進展がありましたので、これまでに導入をあきらめた管理組合でも、再検討の余地があるかもしれません。

ユアスタンド社ホームページより

マンション総合EXPO 2022にて

毎年6月に開催されるマンション総合EXPOでユアスタンド社が出展していましたので、早速取材してきました。

一般販売は、間もなく開始される見込みのようです。充電器のタイプは「コンセントタイプ」で、ニッパツパーキングシステムズの機械式駐車場であれば、1機種を除くすべての機種で、地下パレットを含むすべてのパレットに設置可能となるそうです。

黄色い長方形のボックスをパレットの側部に設置する仕様です。
コンセントタイプの割に多少かさばる大きさのボックスになっているのは、そのボックスにケーブルを収納できるようになっているためです。

マンション総合EXPO 2022 ユアスタンド社ブースにて

一般のコンセントタイプのものは、簡素にコンセントが設置されていて、そこにEV付属のケーブルを取り付けて充電をするのが一般的ですが、そのケーブルがそこそこかさばるのと、ケーブルを取り出して自動車とコンセント両方に差し込むという作業が微妙に面倒でした。
しかし、この仕様なら、街の充電ステーションのように、充電器につながっているケーブルを車の給電口に差すだけの動作で済むので、かなり便利に使えそうです。

地下パレットの水没漏電リスクは?

この漏電リスクがあったため、これまでは機械式駐車場への充電器の設置は、地上より上のパレットしか設置できませんでしたが、今回開発されたものは、機械式駐車場を制御する電気系統と充電コンセント用の電気系統を分電し、地下パレットに一定以上の浸水があった時に、充電コンセント用の電気系統だけ落としてショートを防ぐ制御装置を設置することで、地下パレットにも設置が可能となったそうです。

気になる費用は?

今までの1パレット100万円超という水準から、ぐっと安い費用での一般販売となるようで、現状では補助金によって管理組合の実質負担を大幅に減らすことができそうです。また、コンセントタイプなので、将来の更新費用やメンテナンス費用もほぼ心配の必要がないという点も、管理組合の合意形成のハードルを下げる要素となるでしょう。

ニッパツ限定?

共同開発ということもあり、まずはニッパツの機種から始めるようですが、ユアスタンド社は、他の機械式駐車場メーカーにも拡大していきたい意向のようなので、今後の展開に期待したいと思います。

また、今回のマンション総合EXPO 2022では、機械式駐車場装置のメンテナンスや装置の製造販売をしているファム社も出展しており、機械式駐車場に設置できる充電設備を紹介していました。
ファム社は独立系メンテナンス会社の側面もあるので、充電設備の設置によってメーカーメンテナンスを受けられなくなるならば、ファム社がメンテナンスを引き継げるようになっています。ファム社としては、そちらが本業なので、むしろメンテナンス契約の獲得ツールという位置づけなのかもしれません。
受益者負担を管理するような仕組みやアプリについては、テラモーターズ社と協業を進めているようなので、管理組合の選択肢も増えてくるでしょう。

マンション総合EXPO 2022でのファム社のチラシ

いずれにしても、日本においてEV普及のネックとなっている既存マンションでの充電器設置に向けて、官民が知恵を絞って普及の後押しをしていますので、団長もできるだけ管理組合の皆様に、最新の業界情報をお伝えしていきたいと思います。

<管理組合応援団 団長>