通電火災とは?

マンションの防災

「通電火災」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?

大震災が起きた時に時間差で発生する火災の多くは、この通電火災です。
阪神淡路大震災で発生した火災の約6割、東日本大震災においては、5割以上、さらに津波による火災を除くと実に7割近くが電気による火災だったとされています。

時間差で発生する火災

この火災発生プロセスは、次の通りです。

まず、大地震により、停電が起きます。そして、大地震により、家の中では家具が倒れたり、物が落ちてきて家電製品の電源コードを傷めたり、白熱灯や暖房器具などに可燃物が覆いかぶさることもあります。
そうした危険な状態の中で電気が復旧した時に、それが原因で火災が発生することがあるのです。

もし、大地震が夜に起きたとしたら、メチャメチャになっている家の中の状況もわからず、暗闇の中で混乱している中、やっと電気が回復したと思ったときに火事が発生するという、なんとも無慈悲な火災なのです。

内閣府 感震ブレーカー等普及啓発チラシから

通電火災を防ぐには

まず、ご自宅のブレーカーがどこにあるか、確実に認識していますでしょうか?

大地震の直後、「自宅を離れる際は、必ずブレーカーを落とす」というルールを徹底しましょう。これは、管理組合の日頃の防災活動の中で啓発していくとよいでしょう。
その後電気が回復した後、家中の家電やケーブル、コンセントに異常がないかをチェックできる状態であれば、ブレーカーを戻してみて、焦げるにおいなど、少しでも異常があれば、再度ブレーカーを落として原因を探し、対応するようにしましょう。

それでも、外出中に大地震が起きたり、地震の直後に慌ててブレーカーを落とさずに家をでてきてしまったときは、どうすればよいでしょうか。

そんなときに、活躍するのが感震ブレーカーです。

感震ブレーカーとは

内閣府 感震ブレーカー等普及啓発チラシから

感震ブレーカーは、いくつか種類がありまして、分電盤に感震ブレーカーが内蔵されたものが、一番高価で5~8万円+工事費くらいの価格帯のようです。

分電盤にも耐用年数がありますので、例えば築20年を超えて、そろそろ更新を考えるのであれば、この機会に感震ブレーカー内蔵のものに更新するのもよいでしょう。

分電盤がまだそれほど古くないようでしたら、後付け型や、コンセントタイプ、簡易タイプの中で、選ぶことになると思います。

後付け型は、感震ブレーカー内蔵分電盤と同様に電気工事が必要ですが、専門家に設置してもらう安心感があります。コンセントタイプや簡易タイプについては、数千円から1,2万円程度で機器を購入し、自分で設置することができます。

政府が感震ブレーカーの普及に積極的であることから、多くの自治体が導入の際の補助金を設定しています。自治体によって、補助金の対象となる範囲や金額が違いますので、所轄の自治体に確認することをお勧めします。

感震ブレーカー導入の際に気を付けること

例えば、震度5強以上の地震が起きると、家具が倒れたり、ガラスや食器などが割れて家の床が危険な状態になる可能性があります。そのような揺れが起きても、その地域全体が停電にならなかった場合、電気があることで、家の中の危険を確認することができたり、すぐにテレビなどで震災情報などを確認したりできるでしょう。

感震ブレーカーは、そのようなときにブレーカーを強制的に落としますので、夜であれば家の中が真っ暗になり、暗闇の中での行動は、危険が増します。

そのような場合に備え、電気が遮断された際に点灯する非常灯や、居室の各部屋に懐中電灯を備えておくと良いでしょう。これは、感震ブレーカーを設置していなくても、停電の際にはとても助かるので、是非準備をしておくことをお勧めします。

感震ブレーカー内蔵型の分電盤や、工事によって既設の分電盤に内蔵型と同様な機能を後付けする場合は、大きな揺れが発生してからブレーカーが落ちるまで3分程度猶予があり、その間アラートも鳴るので心の準備もできます。
一方で、電気工事不要の簡易タイプの感震ブレーカーだと、揺れた瞬間にブレーカーが落ちます。その3分をどう考えるか、検討ポイントにしてみてください。

また、コンセントタイプは、大きな揺れがあった時に「擬似漏電」を発生させて、既設の分電盤にある漏電遮断機能によってブレーカーを落とす仕組みで、3分猶予など時間差をつくる機能がついているものもあります。
簡易タイプのものよりも、値段は高くなりますが、分電盤そのものを更新したり、工事をして後付けするよりも安く設置できます。

このタイプは、既設の分電盤の漏電遮断機能が正常に作動することが前提です。
例えば、分電盤の使用期間が15年を超えているような場合、おそらくメーカーの耐用年数は過ぎてますので、その機能を頼りに感震ブレーカーを設置するのはあまりお勧めできません。

管理組合の決定で全住戸に導入することはできる?

標準管理規約では、基本的に修繕積立金は専有部分の修繕などには使えません。
ただし、給排水管のように、共用部分と一緒に専有部分も更新工事をした方が、それぞれ単独でするよりも、あきらかに費用が軽減される場合は、規約を変更した上で修繕積立金から拠出することも認められる場合があります。

こうした解釈を応用して、専有部分の火災でも、周辺住戸へも被害が発生するものなので、その防災設備を整えることは共有の利益に資すると考えて、規約を変更した上で全戸一括で感震ブレーカーを導入し、その費用を修繕積立金から拠出している管理組合もあるようです。

感震ブレーカーは様々な価格と仕様があり、選択の幅が広いことと、行政が感震ブレーカーの普及を特に進めたいのは、延焼のリスクの高い戸建て住宅が密集する地域であることなどを、十分に考慮して検討されることをお勧めします。

<管理組合応援団 団長>