マンションの水害対策

マンションの防災

近年明らかに豪雨や台風による被害が増加していることは、肌で感じられるのではないでしょうか。

最近の事例を見ると、「マンションは水害に強い」とはいいきれなくなってきたと思います。個々のマンションによって、その危険度は大きく異なり、とるべき対策も違ってきますので、まずは、ご自身のマンションが、公開されているハザードマップ上でどこに位置しているかを確認しましょう。

2019年の台風19号で増水した多摩川の影響で武蔵小杉のタワーマンションが大きな被害を受けたことは、記憶に新しいと思います。

水害の頻発が火災保険料の値上げの要因になっている

特に2018年と2019年が2年連続で1兆円規模の保険金支払いとなったことは、保険業界の常識を変えた出来事でした。

年度主な風水災、雪災支払保険金(火災保険)
2012年度4月3日からの低気圧575億円
2013年度7月28日の大雨
8月9日からの大雨
9月2日の突風
台風18号
台風26号
10億円
4億円
31億円
304億円
315億円
2014年度2月の大雪
広島土砂災害
2,906億円
38億円
2015年度台風15号
台風18号
1,530億円
3,669億円
2016年度台風10号1,456億円
2017年度7月豪雨(九州北部)
台風5号
台風18号
台風21号
2月4日からの大雪
55億円
56億円
300億円
1,078億円
127億円
2018年度7月豪雨(西日本豪雨)
台風21号
台風24号
1,520億円
9,202億円
2,856億円
2019年度台風15号(房総半島台風)
台風19号(東日本台風)

10月25日の大雨
4,244億円
4,751億円
155億円
2020年度7月豪雨
台風10号
1月7日からの大雪
848億円
932億円
416億円
2021年度7月1日からの大雨
8月11日からの大雨
65億円
356億円
日本損害保険協会 統計データより

ハザードマップを確認する

まず、各自治体が公表しているハザードマップを確認しましょう。豪雨による河川の氾濫や、土砂災害、津波による被害など、いくつか種類がありますので、地域の特性に合わせてそれらを重ね合わせて使います。

そして、外水だけでなく、内水氾濫についても確認しておきましょう。内水氾濫のハザードマップは、すべての自治体が作成しているわけではないので、もし、内水氾濫のハザードマップがない地域でしたら、周辺の土地に比べてマンションの敷地が高いか低いかを確認し、低い場合は内水氾濫のリスクを想定した対策をとりましょう。

豪雨や台風はある事前の予測が可能

水害をもたらす線状降水帯や台風は、気象予報によってある程度の正確性をもって事前に予測が可能ですので、それらの情報には常にアクセスできる状態にしておきましょう。

新築マンションの販売会で販売会社から、「数10年に1度の豪雨でも耐えられるような排水ポンプ」などと性能を説明されたこともあったのではないでしょうか。最近では、ひと昔前の「数100年に1度」の豪雨が毎年のように発生する時代になってきましたので、どんな高性能な排水ポンプも限界があることを覚悟しておきましょう。
また、それらも河川の氾濫や津波が直撃したら、ひとたまりもありません。

地震とは違い、起きることがあらかじめ分かれば、備蓄の確認や、止水板、土のう・水のうの準備、エレベーターの籠や機械式駐車場を上げておくなど、降雨量の段階に応じて対策をシミュレーションしておくこともできるでしょう。

マンションは水害に弱い?

戸建て住宅は水害に弱く、マンションは強いというイメージを持っている人もいると思いますが、マンションは地下に設備があるところも多くあり、そこが浸水してしまうと基本的機能が停止してしまいます。特にタワーマンションなどでは地下に電気設備が設置されており、そこが浸水してしまうと、マンション全体が停電し、復旧までに相当な時間を要することになります。非常用電源が用意されているところもありますが、1~2日間が限界で、稼働箇所も非常に限定する設定になっているを思います。エレベーター、給排水機能が止まってしまうと、高層階の住民は、よほどの備蓄がない限りは自宅避難生活はほぼ不可能でしょう。実際、停電・断水となった武蔵小杉のタワーマンションでは、設備復旧までの間、ホテルに仮住まいしていた住民が多かったそうです。

マンション内に水が入り込むのを防ぐのは、止水板や土のう・水のうがすぐに思いつくと思います。止水版は、緊急時に初めて使うことにならないように、防災訓練の際に、実際に複数の住民が設置を経験しておくことが大切です。土のうの設置は体験あまり必要ないかもしれませんが、最近は土のうの代わりに場所をとらない水のうが備蓄されていることが多いです。これは、住民の皆さんで使い方を体験しておくことをお勧めします。

止水板や土のう・水のうで外からの水を防げたとしても、地下の公共下水管があふれ出し、地下からマンション内に浸水する内水氾濫もあるので、そうしたケースも想定しなければならない場所かどうかを確認し、必要な対策を検討しましょう。

<管理組合応援団 団長>