マンションの寿命は何年でしょうか?40-50年で建て替えとなる例もありますが、海外では築100年を超す集合住宅はたくさんあり、築年数が流通価格の重要な要素ではないようです。
日本の場合、集合住宅の歴史はまだ浅く、住宅といえば木造のイメージが強いため、「上物は数10年で寿命がくるもの」という固定観念が残る国でもあります。
では、実際に平均的なマンションは、どれくらいまで建て替えせずに住み続けることができるのでしょうか?
旧耐震基準のマンションは建替えるべき?
築後40-50年で建て替えられているマンションを見聞きすることがあるので、マンションの寿命がだいたいそれくらいなのだと考える人もいると思います。
実は、ここ20年ほどで建替えられているマンションは、老朽化が主要因ではなく「旧耐震基準で建てられた」ことが大きな要因であることも多いのです。
1981年に建築基準法が大幅に見直され、「震度5強程度でも倒壊しない」から「震度6強ー7程度でも倒壊しない」という耐震基準に変更になりました。
そして、1994年の阪神・淡路大震災で旧耐震基準で建てられたマンションに被害が集中したことから、改めて耐震基準の重要性が認識され、「旧耐震基準マンションの建て替え/耐震補強」が国の重要課題のひとつとなり、建替えが進められてきています。
耐震基準が理由で建て替えとなるのも、マンションの寿命のひとつの要因といえますが、1981年以降の新耐震基準で建てられたマンションであれば、そのことを要因として考えなくてもよいでしょう。
マンションの寿命は何で決まる?
日本の大半のマンションは、鉄筋コンクリートで躯体が作られています。
この鉄筋コンクリートの耐用年数が寿命に関するひとつの要素となります。
高度成長期にマンションが大量に建設されていた頃、建設会社が材料の調達に困り、粗悪なコンクリートが使われたケースもありましたが、2000年台以降のマンションであれば、そうしたケースはまれで、メンテナンスを怠らなければ、躯体は100年を超す耐久性を前提とすることができると思います。
躯体の梁、柱、壁、床に問題なければ、そこに付属するすべての設備を取り替えることも理論上は可能です。平成初期くらいから、将来の設備の更新を意識した設計や、耐久年数の長い部材を採用するマンションが多くなりました。
それよりも前に建てられたマンションの中には、修繕や設備の更新時に莫大な費用がかかる一方で、修繕積立金が不十分で、経済上の理由で延命を断念せざるをえないケースがあります。
多くのマンションの長期修繕計画の期間は30年程度になっていると思いますが、エレベータの入れ替え、給排水管の入れ替え、電気系統の入れ替え、玄関ドアの入れ替え、窓サッシの入れ替えなど、耐用年数が40年を超えるような設備の更新は、長期修繕計画に入っていない可能性があるので、それらを含めてマンションの設備全てを更新しても、修繕積立金が破綻しないかどうかを試算しておくのは非常に有意義だと思います。
また、社会的に不適合になったマンションは、延命できない場合もあります。
例えば、エレベータのない4-5階建て、オートロックなし、天井高や居室の広さが不十分などの理由で、現在の社会環境での需要に合わず、空き家が増え、建替えを余儀なくされるケースです。
近年建設されたマンションが、50年後の社会に受け入れられる保証はありませんが、少なくとも長期に亘り価値を保ち続けることを意識した設計・仕様と計画が標準装備されるようになってきたと言えるでしょう。
鉄筋コンクリートの耐久年数を伸ばすには?
鉄筋コンクリートは、コンクリートの圧縮強度と鉄筋の引張強度を組み合わせた非常に優秀な建材です。コンクリートの強度は半永久的に劣化しないと言われ、鉄筋の劣化(=錆び)がこの建材の寿命を決めるといっても過言ではありません。
打ち立てのコンクリートは強アルカリ性であるため、その状態が続けば中の鉄筋は錆びることはありません。しかし、長年酸性雨や空気中の炭酸ガスなどに曝されると、コンクリートは中性化していきます。そして、中性化が進むと中の鉄筋が錆び、膨れ上がった鉄筋によって爆裂が起きたり、強度が下がる原因になるのです。
つまり、コンクリートを雨や大気に触れさせないように、屋上防水や外壁材のメンテナンスをしっかりやることが大事だということです。また、コンクリートは特性としてひび割れが起きやすい建材なので、ひび割れから雨水が侵入を防ぐ小まめな補修を心がけましょう。
100年以上の耐久年数を目標に!と頑張る必要はありません。これらのことは、正常に管理組合を運営していれば適切な修繕がなされると思いますので、自然体で実現が可能なものだと思います。
<管理組合応援団 団長>