管理組合と自治会(町内会)はどう棲み分ける?

コラム

新築マンションができた時、管理費・修繕積立金と自治会(町内会)費は一緒に銀行口座から自動引落しされる契約になっているのが普通です。
でも、自治会への加入は任意のはず。祭りや防災イベントなどの参加をどうするか、管理組合のお知らせと同じように案内が来ていませんか?
管理組合の役員が自治会(町内会)担当を兼任するのか、別の担当者を決めるべきなのか、皆さんどうしているのでしょうか?

分譲マンションの自治会(町内会)の加入率はとても高い

分譲マンションが建設される際、デベロッパーが開発をスムーズに進めるために、その土地の近隣住民と事前に交渉します。その交渉によって管理費等と一緒に自治会(町内会)費を徴収することを原資契約で設定していることが多いのです。

そのため、分譲マンションの自治会(町内会)への加入率は非常に高く、その地域の自治会(町内会)にとっては、非常に大きな収入源になります。
長い歴史がある自治会(町内会)は、主要役員ポストはがっちりと固まっていますので、新築マンションの自治会(町内会)担当者になった人は、会合に出向いていって、地域のルールを教えてもらい、管理組合にフィードバックする、というところからスタートすることになります。

加入率が年々低下傾向にある都市部の自治会(町内会)にとっては、分譲マンションは、勧誘無しにまとまって入会してくれるありがたい団体という位置づけでしょう。

自分だけ脱会することはできる?

区分所有者にとって管理組合は強制加入ですが、自治会(町内会)は任意加入ですから、脱会も任意です。
判例もありますので、個人の脱会を止める手立てはありません。
いまだに分譲マンションの加入率が高いのは、脱会してもいいことがあまり知られていないということも要因のひとつでしょう。

ただ、脱会すれば当然自治会(町内会)の恩恵は受けられなくなることになります。分譲マンションで自治会(町内会)に加入していると、どんなメリットがあるのでしょうか。

自治会(町内会)加入のメリットは?

良いコミュニティがあることは、住み心地につながります。マンション内はもちろん、マンションのある地域住民とつながりを持ち、一緒にその地域の生活環境を豊かにしていくことに協力し合う場所が自治会(町内会)です。

多くの高齢者や子供たちにとって、地域で催されるイベントや集会は、生活を豊かにするものでしょう。一方で単身の若者や、仕事が忙しくて地域の集まりに参加する時間も余裕もない人にとっては、普段はあまりメリットを感じられないかもしれません。
しかし、どんな方にとっても、自治会(町内会)は、防災と防犯の点で頼りになる存在です。マンションにも防災計画と避難訓練がありますが、義務付けられた最低限を実施しているだけのところが多いのではないでしょうか。
火災や震災だけでなく水害も頻繁に起こる昨今、その地域の特性に合わせた防災対策を積極的に考え、行政とパイプのある自治会(町内会)が、情報も経験知も持ち合わせていますので、大いに活用すべきだと思います。

もちろん、自治体(町内会)に加入していなくても、被災時に行政の支援を受ける権利はありますし、住民同士の助け合いの現場で、自治会(町内会)加入しているかをチェックするようなことはないでしょう。
それでも、災害が起きた時には一番頼りになるのが近隣住民ですから、日ごろから防災対策についても地域住民全体で一緒に考え準備をしていれば、心強いですよね。

管理組合との役割の違いは?

マンション内も含めて、良好なコミュニティの形成は、住み心地にだけでなく、防災や防犯の面にもプラスであることは疑いの余地はないでしょう。

その観点から、2016年までのマンション標準管理規約には管理組合の業務に「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」という条文があったのですが、2016年の改正で削除されました。削除の意図は、「コミュニティ」という言葉が拡大解釈されて、本来自治会の運営費とすべきものを管理費から拠出するなど住民同士のトラブルが多発していたため、管理組合にとってコミュニティ形成は重要であると認めつつ、標準管理規約の条文からは削除し、自治会(町内会)費と管理費の経理を明確に区分することが示されました。

最近の大規模マンションでは、マンション内の様々なサークルに対して管理組合が活動を支援することで、住民同士のコミュニティ形成に役立てているケースが増えています。支援の範囲は、サークルの共用施設の利用にとどめ、サークル活動に必要な費用は、各サークルメンバーが自己負担する、というルールが一般的になっているようです。

大規模マンションの中には、そのマンションだけで独立した自治会(町内会)を設立するケースもあり、その場合は、コミュニティ活動を自治会(町内会)の管轄にすることで、もっと積極的にサークル活動などを支援することも可能でしょう。

自治会と管理組合は、どちらも「コミュニティ活動」は重要としながらも、前者は任意加入、後者は強制加入という違いがあることに十分配慮した経理と使途のルールを個々のマンションの状況に応じて策定すべきだと思います。

自治会の担当者と管理組合の役員は、兼務すべき?

これも、個々のマンションの状況によります。
マンションが自治会(町内会)の中で、それほど大きな存在ではなく、歴史ある自治会(町内会)に「参加」している関係であれば、管理組合の役員の中に自治会(町内会)の担当をおき、自治会(町内会)との連携、交渉、連絡をするのが一般的だと思います。

自治会(町内会)の中で、マンションの存在が大きく、何かのイベントをすれば、参加者の半数以上がマンションの住人というような場合は、自治会(町内会)の役員の就任を要請されたり、マンションの敷地を自治会(町内会)の活動に利用するようなケースも多く出てくるでしょう。
この場合が最も自治会(町内会)と管理組合の違いについて、配慮しなければなりません。
それぞれの役員が兼務をしている場合は、利益相反がおきる場合がありますので、それぞれの立場で議論・検討がなされたことを明確に議事録に残しておくことをお勧めします。

マンションの規模が大きく、マンションだけで独立した自治会(町内会)を形成している場合は、自治会(町内会)の業務も全てマンション住人が請け負うことになるので、管理組合の役員との兼務はかなりハードになります。
組織を明確に分ける意味でも、組合役員とは別の担当者とすることを基本として、兼務は一部の役員だけにする体制が適切ではないでしょうか。
先に説明したように、自治会(町内会)費の使い方は管理組合の管理費にくらべ、かなり自由度があります。また、自治会(町内会)は行政から様々な補助金を得ることもできますので、管理費との棲み分けを明確にしながら、うまく両立させることができれば、コミュニティ形成、防災・防犯の点で非常に優れたマンションとなる基盤を作ることができると思います。

<管理組合応援団 団長>