個人情報の取り扱いは大丈夫?

コラム

2017年施行の改正個人情報保護法で、これまで5,000人以下は適用対象外としていた人数要件が撤廃されましたので、ほぼすべてのマンションの管理組合は、「個人情報取扱事業者」に該当することになりました。

この改正を受けて管理会社が保守的になりすぎてしまった結果、必要以上に組合員名簿の開示に慎重なところもあるようですが、正しい目的に利用するのであれば、開示をしない方が規約違反になる場合もあるので、法律やルールを正しく理解することが大切です。

管理組合が保有する個人情報はどんなものがある?

マンションの管理組合には、以下のようにいくつかの名簿があると思います。

【種類】【主な利用目的】
組合員名簿
(区分所有者名簿)
総会の招集通知、議決権行使管理、役員候補選定など
居住者名簿
(同居者全員分)
居住環境に影響のある修繕や点検の連絡、災害時の安否確認など
要援護者名簿災害時などの緊急時の援護活動
駐車場契約者名簿駐車場の管理、車庫証明照会など
自治会加入者名簿自治会費徴収、(※自治会活動に利用する主体は自治会)

このうち、組合員名簿と居住者名簿の2つはどの管理組合でも備えているのではないでしょうか。
個人情報保護法では、個人情報取扱事業者は、個人情報の取得の際に利用目的を特定して明示し、目的外の利用や、目的外に第三者に提供する場合は、本人の同意が必要となります。
近年の法改正ですので、これらの点を踏まえたルールを整備して運用できている管理組合はまだ少ないのが実情だと思います。

また、これらの個人情報は、正確でないと意味がないので、もし定期的な情報確認ができていない管理組合は、1年1回記録された情報に変更がないか確認しましょう。2022年4月から始まる「管理計画認定制度」でも、チェック項目になっていますので、今後は必須の作業となると思います。

理事以外の人が、個人情報の開示・閲覧を求めてきたら?

災害などの緊急時、警察の捜査、裁判所からの請求などであれば、本人の同意なく管理組合が保管している個人情報を提供することはできます。

それ以外のケースについて標準管理規約では、以下の条文で定めています。

(帳票類等の作成、保管)
理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。

マンション標準管理規約(単棟型)第64条(電磁的方法が利用可能でない場合)抜粋

この条文だけで解釈すると、理由を付した書面で請求すれば、利害関係人でも組合員名簿を閲覧できることになってしまいますが、組合員名簿は個人情報にあたりますので、個人情報保護法によって「目的外で」第三者に情報提供する場合は本人の同意が必要になります。

団長の個人的な意見としては、標準管理規約のこの条文は誤解を生みかねないので、修正すべきだと思います。

つまりほとんどの場合、第三者に名簿を閲覧させることはできないのですが、逆に「目的の範囲内」となるのは、次のケースです。

一般の組合員が、組合員総数および議決権総数の5分の1以上の同意を得て総会を招集する目的で、当該組合員から組合員名簿の閲覧を求める場合がそれにあたります。
一般の組合員が総会を招集するときは、大抵の場合その組合員が理事会や理事長の対応や方針に不満をもっているので、理事長は個人情報保護をタテに名簿の閲覧を拒否したくなるのですが、2017年の裁判でも、閲覧を認める判決がでています。

「閲覧」するというのは、コピーや写真撮影は許される?

標準管理規約では、「閲覧させなければならない」とだけ記されているので、コピーや写真撮影は、「謄写」にあたり、管理組合は拒否することができると解釈する人も多いのですが、2017年の裁判で規約になくても「写真撮影させよ」という判決も出ています。
実務的にも、「閲覧」しかできなかったら、総会の招集通知を発送するための宛名を正確に作ることなどできないですよね。

過去の判例では、閲覧のみでコピーを断ることはできるという判例もありますが、その理由として規約に明記されていないことと、閲覧場所にコピー機がなかったり、コピーに費用が発生することなどから各管理組合がその事情に応じて自主的に規定すべきものとしています。

写真撮影やコピーについては、裁判では判決が揺れていますので、絶対的な正解があるわけではありませんが、団長としては、「謄写」という言葉が管理規約にあれば、もめることのない話だと考えています。
ただし、コピーや撮影データは、不正利用されるリスクを無視することはできないので、謄写については、区分所有者に限定して利害関係者は制限するなど、関連する条文も同時に見直しすべきでしょう。

いかがでしたか?今回はちょっと堅い話になってしまいまいたが、大切なことですので、一度理解しておいていただくことをお勧めします。

<管理組合応援団 団長>