マンション管理と脱炭素の関係

100年価値を保つには

マンション管理と脱炭素(カーボンニュートラル)社会の関係について考えてみたいと思います。

脱炭素社会の実現は、国も企業も個人もトッププライオリティのひとつになっているのではないでしょうか。
今後、マンションの管理組合の理事会で、「脱炭素社会に向けて当管理組合が取り組むべきこと」を議論するような日も来るのではないかと思います。

コンクリート製造過程でのCO2排出量

日本政府は、2050年までに脱炭素(カーボンニュートラル)社会を実現するという目標を発表しています。

マンション建設には欠かせないコンクリートは、その製造過程で大量のCO2を排出します。大成建設によると、世界のコンクリート製造量は、年間約40億トンで、1トンあたり約770㎏のCO2が排出されるそうです。そして日本においては、温暖化ガスの総排出量の3~4%を占めているそうです。

これまで、マンション業界の課題といえば、旧耐震基準で建設されたマンションの「建て替え」の必要性が注目され、スクラップ&ビルドを推し進めるような風潮も、一部にはありました。
しかし、大量のCO2を排出して建設した建物を短期間に建て替えることが、地球環境にとって、どれだけ良くないことなのかは火を見るよりも明らかでしょう。

最近では、コンクリートに炭酸カルシウムを混ぜ込み、CO2を封じ込めることによって、カーボンニュートラルを実現するような研究が進められています。
社会課題に敏感な米国の先進企業などでは、自社拠点の建設にはそうした低炭素コンクリートを使用することを宣言しているところもあります。
近い将来、政府や民間の努力によって、そうした低炭素コンクリートが普及したとしても、建設業が排出するCO2に占める「資材生産時」のそれは8%程度に過ぎません。マンションを建設するのには、まだまだ環境に相当な負荷を与える状況は続くでしょう。

管理組合に求められる脱炭素社会に向けた取り組み

大きく分けて2つあると考えています。

ひとつは、日常の管理における省エネの徹底です。

  • 照明をLEDに変える
  • 窓ガラスの素材やサッシを断熱効果の高いものに変更する
  • 屋上や外壁の修繕時に断熱効果を高める
  • 給水方式を受水槽方式から水道管直結方式に変える
  • 幹線設備の単相3線式への変更※
  • EV充電器の設置

※幹線設備の変更は、専有部分にIHクッキングヒーターやエコキュートなど省エネ効果の高い設備機器を新たに導入する際に必要となるため。

そしてもうひとつは、前述したように、日々のメンテナンスをしっかりすることで、マンションの寿命を限りなく伸ばすことです。
ここで、留意しなければならないのが、「日々のメンテナンスをしっかりすること」は、大規模修繕工事の周期を短くしてこまめに実施することではありません。
劣化していないものを修繕工事の機会に一緒に更新してしまうのは、逆にエコではありませんので、定期的に劣化診断をした上で、本当に必要な修繕工事を適切な時期に実施することが省エネにつながります。

マンションを長寿命化するには、物理的なメンテナンスだけではなく、変化する社会環境への適応や、財政面での安定も必要です。
それらは、管理組合が有効に機能してこそ、適切に、そして柔軟に対応ができるのだと思いますので、マンション管理組合応援団は、そのためのお手伝いを続けていきたいと思います。

<管理組合応援団 団長>