上階から水漏れ!保険は?賠償責任は?

トラブル対処法

マンションのトラブルで多いのが漏水です。
上階の給排水管からの漏水や水栓の締め忘れや排水溝のつまりなどででうっかりトラブルが下階の部屋を濡らし、壁紙だけでなく、衣類や家具調度品、電化製品などにも被害が及ぶケースも多々あります。

漏水を防ぐための心がけや、漏水が起きた時のチェック項目や手順などは別の記事で紹介することにして、この記事では、漏水事故に対して理事会が確認すべきポイントについて解説します。

水漏れ発生から、応急対応までの流れ

マンションでの漏水事故は、水漏れの一報は管理員が受け、管理員もしくは管理会社のフロントマンが状況を即時確認し、上階の住人に連絡をとって確認をしてもらい、原因がすぐに解消されれば、理事会はフロントマンからその結果報告を受けることになるでしょう。

しかし、初見では原因が不明、あるいはすぐに解消されない場合は、壁裏・床下の調査をすることになり、上階の住戸の許可を得た上で給排水管の破損などによる漏水がないかをチェックすることになります。水漏れの調査・補修工事を請け負う会社の多くは、緊急対応を受けてくれるので、上下階の住戸に調査のスケジュールを打ち合わせして、できるだけ早い対応が必要となります。
このやりとりは時間との戦いになりますから、初期対応は管理会社に任せて、理事会は邪魔しないように報告を待ちましょう。

漏水事故は、マンションにはよくある事故ですので、管理会社もある程度対応はマニュアル化されていると思いますが、新人や経験の浅いフロントマンですと、対応を誤ってかえって問題を大きくしてしまうこともあります。
当事者の住人は、急に不安な状況に置かれます。被害を受けた住戸だけでなく、原因と疑われる住戸に対しても、できるだけ小まめに情報を共有することが大切です。
当事者は、この先どうなるのかがとても不安ですので、漏水事故は珍しい事故ではないということと、一般的な対応の流れについてまず知らせてあげることは、とても重要でしょう。

漏水による被害は誰の責任?

ここで理事会が認識しておかなければならないのは、専有部分の給排水管の破損や老朽などによる漏水であれば、専有する区分所有者の責任だということです。
高経年のマンションで給排水管の老朽化を放置していた場合も、瑕疵担保責任期間が過ぎたばかりの比較的築年数の浅いマンションでも、専有部分が原因であれば、区分所有者の過失の有無にかかわらず、区分所有者の責任になります。

そもそも、普段の生活で目にすることのない床下の給排水管が専有部分であるという認識を持っていない方はたくさんいます。そして、それが自分の責任だと言われたとたん、感情的なトラブルに発展するケースも少なくありません。
場合によっては床下の調査を拒否されるようなこともあるかもしれません。

管理規約が標準管理規約をベースにしたものであれば、「必要箇所への立入り」という条項があると思います。他の専有部分に被害が拡大する恐れがあるような場合は、調査や応急措置のための立入りを拒否することができないことになっていることを伝え、理解をしていただきましょう。

(必要箇所への立入り)

前2条より管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他のものが管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。
2 前項により立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
3 前項の場合において、正当な理由なく立入りを拒否した者は、その結果生じた損害を賠償しなければならない。
4 前3項の規定にかかわらず、理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。
5 立入りをした者は、速やかに立入りをした箇所を現状に復さなければならない。

マンション標準管理規約(単棟型)第23条

かなり強硬な条文になっていますが、「ここに規定されているのだから、文句を言わず立ち入らせなさい」という姿勢ではなく、マンションは上下左右の住戸が接していることから、漏水などを放置していると被害が拡大してしまうので、こうした条項を設けていることを理解してもらって、調査に協力していただききましょう。

損害は誰が補償する?

そこで確認しておきたいのが、管理組合が加入している損害保険です。「マンション総合保険」などという名前になっていると思います。基本はマンションの共用部分の破損、故障、事故があった場合に補償される保険ですが、多くの場合、この保険に「個人賠償責任保険(居住者包括賠償責任保険)」が特約で付保されていて、マンションの住民(区分所有者ではなく「住民」)が他人に損害を与えた時にその損害を補償してくれます。つまり、専有部分が原因の漏水事故も対応してくれるということです。
原因を疑われている住戸に対して、この保険があることを先に説明すれば、調査などへの協力は比較的スムーズにいくでしょう。

また調査をしても、専有部分が原因なのか共用部分が原因なのか不明な場合は、管理組合の責任で損害を賠償することになります。

水漏れ関係で管理組合が加入する損害保険の内容でチェックすべきポイントは、

  • 施設賠償責任保険が付保されているか
  • 個人賠償責任保険が付保されているか
  • 水漏れ原因調査費用の補償が付保されているか

漏水トラブルは、早急に原因を調べて対処しなければ、どんどん被害が拡大してしまいます。それを防ぐためにも、上階の住民の協力は大切ですので、是非管理組合が加入している損害保険を事前に確認しておくことをお勧めします。

個人賠償責任保険は、管理組合が加入すべきものか?

最近は、この「個人賠償責任保険」の値上がりが顕著なため、管理組合が個人の責任は個人で負うべきとして費用削減の対象となって、契約更新の際に特約をはずすところもでてきています。
個人賠償責任保険は、区分所有者自身が加入する火災保険や自動車保険などに特約で付保されていることが多いので、無保険状態になる可能性は低いのですが、それでも「個人が加入している保険を使って賠償をする」というのは、手続き的にも精神的にもかなりの負担となるため、トラブル処理がスムーズにいかなくなる恐れがあります。
もし理事会でこの特約をはずすことを検討をされる際には、住民に対して丁寧な説明をして、万一の際に、無保険状態にならないことを、全住民に対してご自身の保険内容の契約を確認してもらうステップを設けることをお勧めします。

水漏れの話よりも、保険の話の方が長くなってしまいましたが、個人賠償責任保険が付保されていれば、原因が専有部分か共用部分かを気にする必要もなく、トラブル処理は大きな問題に発展せずに済むことが多いので、まずは保険の内容を確認をしていただきたいと思います。

給排水管については、この3-40年で設備の設計から機能、素材が大きく進化してきていますので、漏水問題の根本的な解決手段は、かなり多くのパターンがありますので、また別の記事でご紹介します。

<管理組合応援団 団長>